2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゴンドワナ超大陸形成時の変成作用の温度-圧力-時間履歴に対する変成流体の挙動
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18J10332
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高村 悠介 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | リュツォ・ホルム岩体 / 温度-圧力-時間履歴 / ゴンドワナ超大陸 / ジルコン / ザクロ石 / 希土類元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用年度1年目は、年次計画書に記載した通り、スリランカ・ハイランド岩体南西部における変成温度-圧力-流体-時間履歴を解析し、当該地域のテクトニクスの再検討を試みた。しかし、①変成温度圧力の記録を残していると期待され、変成流体の主なホスト鉱物としても想定していたザクロ石が高温での変成作用による組成均一化を被っていること、②年代分析を行うジルコンの数が極めて少なく、また粒径も小さいため測定が困難である、という問題点が明らかとなり、研究計画の見直しを余儀なくされた。 その一環として、スリランカとの連続性が指摘されている、東南極リュツォ・ホルム岩体の天文台岩から得られた苦鉄質変成岩の観察を行った。その結果、この試料中のザクロ石の周囲を取り囲む斜方輝石+斜長石のシンプレクタイト組織を発見した。このことと、ジルコンの希土類元素組成を測定することで変成温度-圧力-時間履歴の解析が可能であることを見出し、新たな研究課題とした。 新たな研究手法および結果は以下のとおりである。①岩石薄片の作成および偏光顕微鏡での観察を行い、反応組織の存在を確認。②電子線マイクロアナライザ―を用いた分析。③鉱物平衡モデリング法を適用し、ピーク変成温度圧力条件(温度=800-900℃、圧力=4-9 kbar)を推定した。④ジルコンのウラン-鉛年代および希土類元素組成を、国立科学博物館のレーザーアブレーションICP質量分析器を借用して測定した。 発見した反応組織は、岩石の上昇によるザクロ石の分解を示唆するものである。また、ジルコンに記録された580-500 Maの変成年代と希土類元素組成を比較すると、約540-510 Maにザクロ石存在下に特徴的なパターンから非存在下のパターンに変化していることが確認された。この成果は当該地域のテクトニクスを考察する上で重要な情報であり、当該年度中に国内/国際学会で発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画の実施が困難な状況となり、研究対象地域および研究手法の大幅な変更を行ったため、提出した研究実施計画書に照らし合わせれば、進捗は遅れていると言わざるを得ない。一方、新たな研究手法で重要な成果を挙げることに成功しており、学会における発表も問題なく実施できていることから、区分としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、リュツォ・ホルム岩体の他の地域に産出する岩石についても変成温度圧力の推定とジルコンの年代および希土類元素組成の測定を行い、岩体全体の温度-圧力-時間履歴の考察を進める。また、薄片中のジルコンについてその場でのカソードルミネッセンス像の観察を行い、ジルコンとザクロ石や反応組織との岩石学的関係も並行して明らかにする。可能であればスリランカや南インドなど他のゴンドワナ地域に見られる同種の岩石についても上記手法を適用し、超大陸規模のテクトニクスについて考察を行いたいと考えている。 また、今年度も積極的に学会に参加し、これらの成果の発表を行う予定である。
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