2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Knowledge Community-Type Programming Learning Support System Involving Knowledge Circulation and Succession
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18J10379
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
切通 優希 熊本県立大学, アドミニストレーション研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | プログラミング教育 / 学習環境デザイン / 学習支援システム / ナレッジコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,「プログラミングを対象とした『知』の循環と継承を伴うナレッジコミュニティ型学習支援システムの構築と,その教育的効果を明らかにすることおよびプログラミング教育における課題(学習の初期段階でのサポート不足や教員数・教員のスキル不足など)を解決する」という研究目的の達成に向けて,広く一般の高校生を対象に研究協力者を募り,提案する学習支援システム利用に関する実験を実施した. 具体的には,まず,継続的なプログラミング学習の導入および動機付けとなるワークショップを2018年8月12日(嘉島町民会館),8月19日(菊池市生涯学習支援センター中央公民館),9月9日および16日(桜の馬場城彩苑),9月24日(人吉高等学校)の計5回開催した.これには,合計49名の高校生が参加した.その後,参加した高校生に,提案する学習支援システムを利用してもらう実験を2019年2月末頃まで実施した.また,継続的なプログラミング学習の到達目標となるコンテストとして「熊本県立大学 アプリアワード」を開催したところ,2017年度もしくは2018年度に実験に参加した高校生10名を含む合計26名の高校生からのエントリーがあり,アプリやアイデアが提出された.このことより,本研究で提案する学習支援システムが一部の高校生に対してポジティブな影響を与えていたことが示唆されたといえる.一方で,学習支援システムの利用が想定よりも少なく,また,高校生がプログラミング学習を継続するための計算機利用環境が想定よりも整っていなかったという問題が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の取り組みによって,これまでの実験協力者のうち10名の高校生が学習目標に到達していたことから,本研究で提案する学習支援システムが一部の高校生に対してポジティブな影響を与えていたことが示唆されたといえる. 一方で,学習支援システムの利用が想定よりも少なく,また,高校生がプログラミング学習を継続するための計算機利用環境が想定よりも整っていなかったことが明らかとなった.ここでの計算機利用環境が整っていないこととは,具体的には,高校生の自宅にPCがないことやインターネット未契約,または,高校のコンピュータルームに配備されているPCにはWebへのアクセス制限があり,プログラミングを学ぶ上で必要な情報収集が十分にできない,高校生が空き時間にPCを自由に利用できないことなどである.また,学習支援システムの利用者が少ないことについては,計算機利用環境が整っておらず,プログラミングに継続して取り組んだ高校生の母数が少なかったことが原因の一つと考えられる.さらに,学習支援システムのコミュニティが活性化しなかった原因について,コミュニティのサイズが,大学生約20名と高校生約50名という非常に大きなものであり,結果として,コミュニティが「知らない人もたくさんいるコミュニティ」になってしまい,参加者の心理的安全性を高めることができず,積極的な投稿がしづらくなってしまったのではないかと推察される. 上記のように,いくつかの問題も明らかとなった.しかしながら,本研究が最終的に目指す持続可能なプログラミング学習環境のデザインという視点では,学習支援システムのみでなく,それを取り巻く人や計算機利用環境などを含めたエコシステム全体の改善に向けて検討すべき重要な点が明らかになったといえ,これについては進展があったと評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,前年度までの取り組みから明らかとなった問題を解決すべく,スモールスケールで追加実験を実施する.具体的には,5月に,熊本市内の高等学校(2校を想定)から,10名程度の高校生の研究協力者を募り,継続的なプログラミング学習の導入および動機付けのためのワークショップを実施する.その後,ワークショップに参加者した高校生には,本研究で提案する学習支援システムの利用と,コンテストへの作品提出を最終的な目標とする,継続的なプログラミング学習を8月末頃まで行ってもらう.なお,高校生に学習支援システムを利用してもらう実験フェーズでは,高校生と大学生メンターおよび研究代表者らのコミュニケーションが学習支援システム上だけに限られないよう,参加校の教員と密に連携し,定期的に学校を訪問させていただき,直接顔を合わせてコミュニケーションを取ることを予定している.さらに,高校生の心理的安全性を高め,学習支援システムの利用を促進するために,高校生を月に1~2回程度大学に招き,ワークショップ参加者間の交流を促進することも予定している. 実験終了後は,学習支援システムを利用した高校生を対象に,アンケート調査を実施する.また,学習支援システムのログデータから,システムがどのように利用されていたか,高校生にどのような教育的効果を与えていたのかなどについて評価を行うとともに,必要最低限の学習環境(計算機利用環境)デザインについても検討を行う.
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Remarks |
※「ワークショップ参加者限定 Q&Aサイト」はクローズド・コミュニティのためURL非公開
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Research Products
(8 results)