2018 Fiscal Year Annual Research Report
Self-maintenance functionalization of titanium dental implants: addition of antibacterial activity and improvement of bone compatibility
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18J10430
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 隆統志 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 歯科用インプラント / チタン / 酸化チタン / 金ナノ粒子 / 可視光応答型光触媒 / 抗菌能 / 高温酸化 / スパッタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科用Ti製インプラントの抗菌機能化と骨適合性向上を両立する表面処理プロセスの一つとして、酸化チタン光触媒によるコーティングが期待されている。これまで、可視光照射下において優れた抗菌能を発現する酸化チタン膜のTi基板上への直接形成を目的に、Au添加酸化チタン膜作製プロセスを検討してきた。2018年度は、Ti-Au合金の大気酸化によるAu添加酸化チタン膜の作製およびその可視光照射下における抗菌能に関する研究を投稿論文として発表し、①Au蒸着Tiの大気酸化によるAu添加酸化チタン膜の作製および可視光照射下における抗菌能評価、②反応性スパッタリングおよび大気中アニーリングによるAu添加酸化チタン膜の作製および光学特性評価を実施した。 ①について、Au蒸着および大気酸化を組み合わせたプロセスを施すことで、工業用純Ti表面においても金属Au粒子を含有するルチル型の酸化チタン膜を作製することに成功した。加えて、初期Au膜厚の増加がAu添加酸化チタン膜の膜厚増加、可視光照射下における抗菌能向上および膜密着力の低下をもたらすことが明らかとなった。優れた抗菌能と膜密着力を両立するようなプロセスの確立は今後の課題である。 ②は、反応性DCマグネトロンスパッタリングによるAu添加酸化チタン膜の作製およびその光学特性の評価・制御に取り組んでいるミーニョ大学(ポルトガル)Jose Filipe Vaz教授との共同研究として着手した。Auペレットを付したTi平板をターゲットとした酸化性雰囲気中でのスパッタリングにより、クオーツガラス、シリコンウェハーおよびTi基板上にAu添加酸化チタン膜を作製した。引き続き得られたAu添加酸化チタン膜の光学特性ならびに可視光照射下における抗菌能についての評価を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、Ti-Au合金の大気酸化によるAu添加酸化チタンの作製および可視光照射下における抗菌能評価に関する論文がJ. Biomed. Mater. Res. Aに掲載され、研究発表という点において大きな進展があった。 第二に、Au蒸着と熱酸化を複合化した新規なプロセスによりAu添加酸化チタン膜を作製することで、Ti基板に可視光誘起抗菌能を付与することに成功した。実用化に向けては膜密着力の向上が課題であるが、本プロセスは①低コスト、②従来の歯科用Ti・Ti合金に適用可能、という利点を有しており、実用化という観点において進展があったと言える。 第三に、2018年度より着手したミーニョ大学(University of Minho)のJose Filipe Vaz教授との国際共同研究において、反応性スパッタリングにより赤色光(波長: 600-650 nm)に対して局在表面プラズモン共鳴による光吸収を示すAu粒子含有酸化チタン膜を作製することに成功した。本プロセスは光誘起抗菌能の波長応答性、膜密着力といった観点からAu蒸着熱酸化プロセスと比較検討するに値するプロセスである。 以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に得られたAu添加酸化チタン膜の密着力が想定よりも低かったことから、2019年度では優れた膜密着力と抗菌能の両立を試みる。 Au蒸着熱酸化における膜密着力低下の原因としては、①酸化チタン膜-基板界面におけるTiの優先酸化に伴うAuリッチ層の形成や、②酸化チタン膜と基板との熱膨張率差により生じる内部応力の発生が考えられる。そこで、①、②を抑制しつつTi基板上にAu添加酸化チタン膜を作製することが出来るようなプロセスとして、「反応性スパッタリング」、「Ti-Au二元系蒸着熱酸化」、「熱酸化による酸化チタン膜作製後のAu蒸着による複合化」の3プロセスについて検討する。酸化挙動や酸化チタン中に添加されるAuの形態・化学状態の調査、抗菌能・膜密着力の評価を行う。 最後に、Au添加チタニア膜の光触媒活性の波長応答性を調査する。Xeランプよりフィルターを用いて取り出した中心波長460, 560, 660 nm、波長幅100 nmからなる可視光を照射光とし、Au添加チタニア膜の光誘起親水性ならびに抗菌能を評価する。これら光触媒活性とAu添加酸化チタン膜の構造や化学状態との関係性の解明を試みる。加えて、2018度に引き続きESRを用いたラジカル生成能の評価による抗菌能の機構解明を試みる。
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Research Products
(4 results)