2018 Fiscal Year Annual Research Report
夾雑ガス系における一酸化炭素と水素を選択的に活用した炭素-水素結合の官能基化
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18J10453
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅田 貴大 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 水素化 / 脱水素化 / 水素精製 / 水素貯蔵 / 粗水素 / 典型元素触媒 / 高反応性分子会合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数のガス成分が混在する夾雑ガスを活用した有機合成プロセスの開発である。従来、合成反応に利用される水素や二酸化炭素、合成ガスなどは化石燃料の改質後に得られるガスから夾雑物を除去して製造される高純度ガスである。しかし、ガスの精製には多くのエネルギーが消費され、目的とするガス成分の損失が生じる場合もあるため、このプロセスの高効率化、低環境負荷化を追求する研究が世界規模で実施されている。本研究では複数のガス成分が夾雑する反応系において目的とする分子を選択的に活用する技術を創出し、夾雑ガス系における合成化学の開拓、及び夾雑ガス自体の工業的価値を見出すことを目標としている。 平成30年度は、高反応性ルイス酸-塩基会合体 (FLP) を触媒とする含窒素環式化合物の水素化/脱水素化反応の水素精製への応用に取り組んだ。私はこれまでに、FLPを触媒としたH2/CO/CO2混合ガス中のH2を選択的に活用した不飽和化合物の水素化反応が効率よく進行することを見出している。しかし、COやCO2が高濃度で共存する条件下では、既存のFLP触媒の活性が著しく低下するという課題があった。そこで、触媒の安定性や反応効率を向上させるべく種々の検討を行った。触媒構造と得られた結果の相関について深く考察し試行錯誤することで、高濃度のCOおよびCO2が共存する条件下においても水素化反応における触媒被毒が抑制され、反応が円滑に進行するFLP触媒系を開発することに成功した。さらに、開発した触媒反応系を活用することでH2/CO/CO2混合ガス中のH2を選択的に有機分子中へと貯蔵し、貯蔵した水素を高純度水素として回収するプロセスの開発に成功した。本プロセスは従来プロセスで別々に行われていた水素の精製と貯蔵を単一操作で実施することが出来るため、水素製造時の省エネルギー化や低環境負荷化に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、高濃度の一酸化炭素および二酸化炭素が共存する粗水素条件下において、水素を選択的に活性化する水素化触媒系を開発した。また、開発した水素化触媒系を応用することで、粗水素中の水素を選択的に有機分子中へと貯蔵し、高純度水素として回収する革新的な水素精製・貯蔵プロセスを確立した。本プロセスは従来プロセスで別々に行われていた水素の精製と貯蔵を単一操作で実施することが出来るため、水素製造時の省エネルギー化や低環境負荷化に寄与することが期待される。以上の研究成果は、水素を安価に製造し、安全に貯蔵・運搬する技術として日本触媒 (株) と共同で特許を出願した。また、今年度中にこれらの成果をまとめて論文を執筆し、投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、高濃度の一酸化炭素および二酸化炭素が共存する粗水素条件下においても効率的に機能する水素化触媒系を開発し、これを応用することで粗水素中の水素を選択的に有機分子中へと貯蔵し、高純度水素として回収する革新的な水素精製・貯蔵プロセスを確立した。しかし、水素貯蔵体の単分子あたりに貯蔵可能な水素量 (H2 wt%) が少なく、水素貯蔵効率が悪いという課題があった。そこで、今後は現在の2-メチルキノリン系 (2.7 H2 wt%) よりも効率的な2-メチルピリジン系 (6.2 H2 wt%) の開発に取り組む。具体的には2-メチルピリジンとの間に狭小反応空間を形成できる新規ホウ素触媒の開発に注力し、粗水素中における2-メチルピリジンの触媒的水素化反応を開発する。触媒分子の構造最適化には理論化学計算による反応性の予測を積極的に取り入れ、理論と実験の両輪を駆使して遂行する。
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