2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの音韻知覚メカニズム:「聴覚説」と「音声知覚の運動理論」の統合とその具体化
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18J10654
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田村 俊介 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 音声知覚 / 音声生成 / MEG / fMRI / 聴覚フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, VOTを手がかりとして行われる閉鎖子音の有声性知覚(/da/と/ta/の聴き分け)を題材として, 聴覚系での音声情報処理および音声生成系を伴った音声情報処理が音声知覚にどのように貢献しているのかについて検討することである。 聴覚系での音声情報処理の役割を検討するために有声性知覚時の脳活動を聴性脳幹反応やMEGを用いて調べた結果, 脳幹での神経応答では刺激の物理的特徴が精度良く表現される一方, 聴覚野の神経応答では刺激の物理的特徴ではなく知覚に依存した反応が見られた。この実験で得られた一部の成果については国際英文誌に論文を投稿し掲載された。 音声生成系を伴った音声情報処理の役割を検討するために, fMRIとMEGを用いて有声性知覚時の音声の生成に関与する脳領域の活動を調べる実験を行った。fMRI実験では有声性生成時の脳活動についても調べた。fMRIを用いた実験では, 聴覚野, 運動前野やsubcentral areaなどの音声生成に密接に関与する脳領域, 聴覚野と音声生成に関与する脳領域の両方と機能的な結合を持つとされるOP4が知覚時と生成時で共通して活動することが分かった。MEGを用いた実験では, 有声性の生成に密接に関与するsubcentral areaの活動やその活動と聴覚野の間の機能的結合が強い参加者ほど/da/と/ta/の聴き分け精度が高いことが分かった。この実験で得られた成果については国際英文誌へ論文投稿の準備を進めている。 さらに, 変形聴覚フィードバックによって有声性の生成を変化させることでそれらの知覚も変化するかどうかを確かめることで両者の相互作用を探る行動実験を行った結果, /da/と/ta/の生成の変化量とそれらの聴き分け精度の変化量に有意な相関が見られた。この実験で得られた成果については国際英文誌に論文を投稿し現在査読対応を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究計画の内, 経頭蓋磁気刺激を用いた実験以外は全て実施することができた。さらに, 日本語母語話者だけでなくその他の言語の母語話者を対象とした実験にも着手しており, さらなる発展が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った実験の結果から音声生成系を伴う音声情報処理が聴覚系での音声情報処理を補完することで頑健な音声知覚が行われることを示唆する結果が得られた。今後の研究ではこの考察を強固にするための追加実験を行う。さらに, 音声生成系を伴う音声情報処理には大きな個人差が見られることを示唆する結果が得られたため, なぜ個人差が生まれるについても検討を進める。
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[Presentation] 磁気共鳴機能画像法と脳磁図を用いた聴覚時間知覚解析2018
Author(s)
廣永成人, 光藤崇子, 田村俊介, 谷口奈美, 中村一太, 帆秋伸彦, 後藤旬兵, 木村岳裕, 中島祥好, 上野雄文, 武井雄一, 山下典生, 加藤隆, 平野昭吾, 鬼塚俊明, 平野羊嗣
Organizer
日本音響学会2018年秋季研究発表会
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