2018 Fiscal Year Annual Research Report
都市部ガーナにおけるシュガー・ダディ/シュガー・マミーに関する人類学的研究
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18J10664
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田 英里 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | シュガー・ダディ / シュガー・マミー / アフリカ / 保健医療 / ガーナ / 関係性 / 経済人類学 / 贈与交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
サハラ以南アフリカ諸国において、「シュガー・ダディ」として知られる男性と若年女性との交際関係を主題とした研究は、女性たちの動機や同交際関係が取り結ばれる原因に焦点をあてて議論してきた保健医療分野が主流である。しかし,実際に彼女たちがどのように交際しているかを論じた研究は数少なく、様々な要因や動機が現実の交際関係にいかに反映されているかは詳細に描かれていない。また、「シュガー・マミー」として若年男性と交際する女性に焦点があたることもなかった。 本研究は、都市部ガーナにおける交際事例を基に、サハラ以南アフリカ諸国の「シュガー・ダディ」との交際関係や「シュガー・マミー」としての交際関係の内実を明らかにすることを目的としている。西欧対アフリカの構図を作り上げてきた先行研究上の多元主義的な議論を再考するために、「シュガー・ダディ」や「シュガー・マミー」をめぐる交際関係が、女性たちの生計実践、ライフコースやその他の社会関係にいかなる独自の機能や意味を持っているのかという課題を解明し、贈与・交換システムとして捉え直すことをめざしている。 平成30年度の主な研究成果は、以下の二点である。第一に、「シュガー・ダディ」との交際関係は、彼らが介するモノやふるまいによってその関係の枠組みが変容し、その他の社会関係と共に変化しうる可能性があることを明らかにした。第二に、「シュガー・マミー」との交際関係は「シュガー・ダディ」との交際に比べて相対的に、よりインフォーマルな関係として存在し、呪術との関連性があることを明らかにした。 曖昧である交際関係を定義するには、ガーナ社会における「ケア」や「親密性」といった概念、および同交際関係をめぐる社会的な評価や国内における性交渉や性愛・性的嗜好に関するさらなる調査が必要である。そのため、倫理的な配慮をさらに要する調査も視野に入れて、次回の滞在に向けて調査体制を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、1. 若年女性の「シュガー・ダディ」との交際、2. 若年女性とその他の社会関係、3. 若年男性の「シュガー・マミー」との交際について、交際関係をもつあるいはもったことのある若者たちへの聞き取り調査を中心に現地調査を実施した。受け入れ機関や滞在先・調査助手の変更が幾度と必要となり、環境整備に時間を要したことで現地調査に費やせる時間が当初より減ってしまい、音信不通や国外への移住によりこれまでの調査相手への研究遂行が難航し、新たな調査対象者の選出を行う必要性もあった。しかし、都市部での調査において人々の流動性は予測できるものであり、早々と軌道修正が出来たことで、次回につながる十分な調査データを収集できた。 「シュガー・ダディ」との交際関係についてのこれまでの研究成果は、2019年3月に紀要論文として公表している。また、2018年12月7日から9日にかけてガーナ共和国・アクラで開催された第8回「アフリカフォーラム」に参加し、“Chopping Love and Money? : The Case of Young Women’s Relationship with “Sugar Daddy” in Urban Ghana”と題してこの研究成果の一部を発表した。2019年5月には、日本アフリカ学会において、「シュガー・ダディ」や「シュガー・マミー」と交際する「シュガー・ベイビー(若者たち)」に焦点をあてた発表を行い、今後これらの成果を学会誌に投稿する予定である。 以上より、現在までの進捗状況は成果発表の時期に変更が生じているが(2)研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、「シュガー・ダディ」との交際についての調査は継続して行うが、「シュガー・マミー」との交際関係について主眼を置く予定である。本研究において、新たな調査対象者を見つけることや国内だけでなく国外への移住・移動を行う彼らへの調査は容易ではない。そのため、参与観察や直接的な聞き取り調査が難航した際に代替となる調査計画の立案や匿名性の高い調査方法も検討する必要がある。現在の研究状況を踏まえて、令和元年度はガーナの行政機関やメディアを通して、「シュガー・ダディ」や「シュガー・マミー」をめぐる交際関係に対する社会的な評価や国内政府の動向についての定性的な調査だけでなく、定量的な調査も実施する。また、参与観察や聞き取り調査が可能な調査対象者とは慎重に綿密なコミュニケーションをとることを心がけ、彼らとのラポールの構築・再構築に力を入れる。
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Research Products
(3 results)