2018 Fiscal Year Annual Research Report
Grobal Grass-Roots Movements of Persons with Psychosocial Disabilities: Diversity in Soliderity
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18J10684
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊東 香純 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 社会運動 / 精神障害 / グローバル / 草の根 / 連帯 / 精神医療 / 障害者 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害者の社会運動に関する先行研究は、国レベルあるいはより狭い地域レベルの運動に注目してきた。これに対して本研究は、グローバル規模や大陸規模の社会運動における連帯のあり方を明らかにしようとしている。 2018年度は、8月から9月に約1か月かけて欧州5か国に滞在し、精神障害者の欧州ネットワークや世界ネットワークで活発に活動してきた活動家に対するインタビュー及び関係の資料収集を実施した。両ネットワークは、1991年に発足した。当時は現在のようにはインターネットが普及していなかったため、紙媒体や電話でのやりとりが主流であった。このため、現地に赴いて活動家を訪問することにより、日本国内にいては収集することが難しい多くの貴重な資料を得ることができた。さらに、上述のような理由から文字資料の乏しいネットワークの発足の初期の出来事について、インタビューから貴重な情報が得られたほか、ネットワークの規模が拡大した2000年代以降についてもインタビューからこれまで記述されてこなかった情報を得ることができた。 2018年度のこれらの調査から以下の2点が明らかになった。1つは、欧州のネットワークと世界ネットワークは同年発足したものの、別々の組織として異なる経緯で発足したことである。もう1つは、特に欧州のネットワークにおいては「精神医療のユーザー・サバイバー」を精神障害者と考えるべきであるか否かについて激しい議論があったことである。 これらの研究成果は、2018年度中に査読付き論文2本などで発表したほか、2019年度以降にも論文や学会での報告として発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、主に欧州と比較的短期間であるがアジアの数か国で調査を実施した。これらの調査ではこれまで発見されてこなかった貴重な資料を収集することができた。しかし、日程的制約や金銭的制約のために、訪問できなかった地域やインタビューできなかった活動家も多い。調査の成果を発表するためには、さらなる調査が必要である。 研究成果の発表に関しては、積極的な研究活動ができた。2本の査読付き論文を執筆したほか、1回の国際学会報告、2回の国内学会報告を実施することができた。査読の過程や学会報告の質疑応答等の場面で、さらに調査、考察すべき課題が発見されたので、2019年度以降に取り組んでいきたい。 上記のような研究の進捗状況をかんがみて、「おおむね順調」であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、再度欧州に調査に行き、2018年度の調査で訪問できなかった活動家を訪問し、インタビューや資料収集を実施する。2018年度の調査を活かして、より広範囲で詳細な調査を実施したい。 研究発表について、査読付き論文や学会報告において成果を発表するほか、それまでの研究をまとめて博士論文を執筆する。主に欧州での調査をもとにしているという意味で他地域の視点が足りないという限界はあるものの、これまで注目されてこなかったグローバル規模での精神障害者の社会運動の現代史を書くことができると考えている。
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