2018 Fiscal Year Annual Research Report
イチゴにおけるメジャーアレルゲンFra aの生理的機能に関する研究
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18J10814
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石橋 美咲 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔アレルギー症状 / PR-10 / パラログ / 植物ホルモン / 季節変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
イチゴのメジャーアレルゲンであるFra a 1(Fra aより通称を変更)について、評価方法の検討と栽培条件の異なる果実の発現解析を実施した。 イチゴのtotal RNA抽出方法を改良・評価し、ダウンストリームの各実験に適する方法を提案した。果托・痩果・葯で実験に応じた最適な評価を行い、阻害物の多い他の植物種にも応用できる成果を得た。また、その手法を用いてFra a 1パラログの情報を整理し、植物体におけるメジャーパラログの推定を行った。 栽培条件について、収穫前後のイチゴ果実に植物ホルモンおよび各種阻害剤を塗布し、成熟期間のFra a 1遺伝子とタンパク質の発現量を比較した。ジベレリン(GA3)を緑色果実に塗布し、成熟期に収穫した場合、Fra a 1.02タンパク質の蓄積が有意に増加した。 さらに、白色系統を含む品種を用いて、Fra a 1の発現における品種間差と季節変動性を調査した。同一環境で栽培した果実において、冬季から春季を通してFra a 1の発現における品種間差は確認されなかった。果実色はFra a 1に基づくアレルゲン性の指標とはならず、品種間差を調査する際は同一環境の果実を用いるべきであることが示された。Fra a 1.01タンパク質の蓄積量は春季に比べて冬季で高かったため、冬季にFra a 1の発現を制御している環境要因を知るために、太陽光と気温に着目した。遮光処理はFra a 1.01タンパク質の蓄積量に影響しなかった。日内変動性については、1月に限り、低温状態にある夜間から早朝にかけて収穫したときに、昼間に収穫した果実と比べてFra a 1.01タンパク質の蓄積量が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAの抽出方法をはじめ、実験系を最適化したことで、より多くのサンプルについてFra a 1の発現解析が可能となった。特に本年度の栽培試験において、ジベレリンや冬期の低温条件が果実におけるFra a 1タンパク質の蓄積を誘導することが示唆され、Fra a 1の発現が制御される環境条件候補について絞り込みができた。直接的にFra a 1を低減させる条件はまだ明らかでないが、前述の誘導条件に基づき、ジベレリン阻害剤の利用などを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
Fra a 1プロモーター::GUS のコンストラクトをシロイヌナズナに導入し、これらの形質転換体を植物ホルモンおよびストレス応答試験に用いる。各個体における誘導条件の検討とGUS発現器官の特定を行う。さらに、遺伝子とタンパク質の発現における初期継時変化と低温誘導性について検証するため、イチゴのカルスおよび実生苗を用いて温度処理を行う。これらをまとめて、植物体全身や果実のFra a 1を適切に制御するための総合考察を行う予定である。
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