2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J10977
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡田 遼 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞老化 / SASP / 細胞質DNAセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、我が国では平均寿命の延長に伴い、がんの罹患率が増加している。この原因の一つとして、加齢とともに体内に蓄積する老化細胞が様々な炎症性蛋白質を分泌するSASPと呼ばれる表現型が関与している可能性が指摘されている。私たちはこれまでに、老化細胞では細胞質にゲノムDNA断片が蓄積することを報告してきた。細胞質DNA断片は細胞質DNAセンサーに認識されて自然免疫応答を起こすことから、SASPの誘導機構の一つとして働くことが明らかとなっている。そこで本研究では、細胞質に蓄積したDNA断片によるSASP誘導機構について解析し、その制御方法を探索し、加齢性疾患の制御を目指すことを目的とする。具体的には①細胞質に DNA断片が蓄積する分子メカニズムを解明し、②細胞質DNAセンサーを介した新たなSASP誘導機構を明らかにし、③細胞質DNAセンサーを介したSASP誘導機構が生体内で加齢性疾患の発症へ関与している可能性を検討する。 平成30年度は上記①、②に関して解析を行った。細胞老化において細胞質にDNA断片が蓄積するメカニズムを解析するために、ヒト正常線維芽細胞を用いて細胞老化を誘導しRNAを回収しRNA-seq解析を実施した。その結果、ゲノムの安定化に関わる分子群の遺伝子発現が老化細胞で低下していることを見出した。その中で特にゲノムDNAの切断と細胞質への蓄積に関わることが示唆された候補分子を同定し、これは細胞老化で発現が低下する分子であったので、その発現制御メカニズムの解析を行った。そしてクロマチンIPやプロモーター解析の結果から、転写レベルでこの遺伝子発現が制御されていることを見出した。様々な解析の結果、この候補分子の発現低下により細胞質にDNA断片が蓄積し、細胞質DNAセンサーを介してSASP因子の発現誘導に関与することが示唆されたため、今後個体レベルでの解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施予定であった細胞老化で細胞質にゲノムDNA断片が蓄積するメカニズムに関与する候補分子を同定した。さらにこの因子の遺伝子発現の低下によりゲノム不安定性が誘導されるため、今後ゲノム安定性についての解析も行っていく。さらに、遺伝子改変マウスを作製して個体レベルでの解析の準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに老化細胞で細胞質にDNA断片が蓄積する分子メカニズムに関わる候補分子を同定し、老化細胞における遺伝子発現制御機構を明らかにしてきた。そこで次年度も継続して、DNA修復経路、転写経路に関わる分子、老化細胞で発現の増減のある分子などをsiRNAによってノックダウンするか、過剰発現させるかして細胞質DNA断片の増減とSASP因子の発現変化を解析することを計画している。さらに、ゲノム上のどの領域から細胞質にDNA断片が蓄積しているのかを明らかにするために次世代シークエンサーを用いた解析を実施する。一方で個体レベルでの解析を行うために、老化細胞で細胞質にDNA断片が蓄積する分子メカニズムの解析の中で同定した新規SASP制御の候補因子のノックアウトマウスを作製し、早老症や炎症性疾患等の表現型を詳細に観察する予定である。
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