2018 Fiscal Year Annual Research Report
中国北朝隋唐時代における仏教寺院の造営制度-瓦の動態的研究を中心に-
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18J11001
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
呂 夢 金沢大学, 人間社会環境研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 瓦 / 北朝隋唐時代 / 皇室寺院 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、瓦資料の調査と基礎分析を中心に研究を進め、中国北朝隋唐時代の皇室寺院に使用された瓦の特徴と変化を明らかにした。調査と基礎分析により、以下三つの結論を出し、一部の成果を論文と口頭発表として発表した。 ①様式と技術:北魏平城時代前期には、布目平瓦、無文丸瓦と文字瓦当は皇室寺院に使用された。その後、黒色磨研瓦と蓮華文瓦当が現れ、主流になり、唐代まで使い続けられた。様式の変化につれて、技術革新も進んだ。洛陽遷都の直前には、黒色磨研の技法が瓦生産の表面調整段階において生み出された。瓦当の製作技術も木笵技法から子母笵技法へ変化した。一つの母笵を使って、複数の陶製の子笵を作ることができるようになった。それによって、瓦当の大量生産ができるようになった。 ②生産管理:北魏平城時代後期の瓦工房には、特殊な技術を持つ工人集団が働いていた。黒色磨研瓦と蓮華文瓦当の創製とともに、瓦の表面に工人の名前を残す生産管理制度が現れた。平城時代後期と洛陽時代の瓦銘は箆書きであるが、東魏北斉に入った後、一気に刻印に変わった。この現象は、瓦生産の主体が世襲の雑戸から、徭役が課された平民に移行して、生産管理の手法がより効率化になったことによって説明できると考える。隋唐時代には、造瓦組織の工人は北斉と同じように平民によって構成されたと考えられるが、生産管理制度は、北朝における個人責任制から、官営工房ごとの生産・流通管理へと発展したと考えられる。 ③使用状況:瓦の類型と出土位置により、寺院の屋根景観を復元した。さらに、出土した瓦の表面状態と法量を通じて、寺院における建物の等級を推測した。 その結果、これまで関連研究者が指摘してこなかった中国古代瓦の生産・使用状況を明らかにすることが可能になり、古代寺院の造営過程についても研究を進展させることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、瓦の生産・使用状況を明らかにして、実物資料である瓦から宗教活動である寺院造営の実態を解明することであった。 2018年5月中旬から8月中旬まで、中国の大同とギョウ城に行って、瓦の整理作業に参加した。大同雲崗石窟研究院に所蔵された雲崗石窟窟上寺院遺跡の瓦と、ギョウ城博物館に所蔵された核桃園建築遺跡の瓦において、模様と表面痕跡を観察し、遺物を実測し、瓦に含む情報を引き出した。 整理作業の後、今年度の資料を一昨年度に入手した西安青龍寺、西安西明寺、洛陽永寧寺の瓦資料と合わせて検討して、中国北朝隋唐時代における寺院用瓦の基礎分析を行った。基礎分析には三つの段階がある。①表面状態、法量、模様によって、瓦を分類した。②製作痕、修正痕及び文字瓦を通じて、瓦の製作技術、瓦を生産した工人集団の構成、生産管理方法について、分析を行った。③瓦の類型と出土位置を合わせて分析することで、瓦と遺跡の関係を明らかにして、寺院の屋根景観を復元した。 今年の調査と基礎分析により、中国北朝隋唐時代の皇室寺院に使用された瓦の特徴と変化、さらに瓦に関する寺院の造営過程を明らかにした。今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目には、文献資料を利用して、寺院造営工程に反映された社会様相の変遷を探究する。手工業の状況と信仰の特徴という二つの視点から分析を進める。造営工程に現れた手工業の状況は瓦の製作技術と工人組織、及び工程管理制度に具現化される。一方、信仰の特徴は建築材料の様式、建物の配置及び造営順序として現れる。具体的な事項は一年目の復元研究によりすでに明らかにしたが、文献資料と合わせて分析することで、寺院造営の実態に関する情報をさらに補充でき、そのうえ北朝隋唐の歴史における寺院造営の位置付けも解明できる。そのため、正史、仏教典籍、地方誌における寺院造営の記録を熟読する必要がある。また、北朝隋唐仏教史、経済史、建築史、および日本古代寺院の先行研究を把握する必要がある。 二年目の目標、即ち、本研究の最終目標は、瓦から寺院造営の実態を復元し、さらにこれに関連する北朝隋唐時代の社会的変遷を探究することである。
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Research Products
(4 results)