2018 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解X線分析法を用いたAlCuFe準結晶鉱物形成メカニズムの解明
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18J11126
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高木 壮大 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | レーザー衝撃圧縮 / 時間分解XRD / 衝撃破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶構造を持つAlCuFe合金が隕石中から見つかり,隕石の分析から,初期太陽系の隕石衝突によって形成された可能性が考えられている.地球上からは発見されていない準結晶鉱物がどのようにして形成されたのかを明らかにすることで,太陽系の歴史に関する情報を得られることができると考えている.準結晶鉱物のみならず,太陽系の歴史はおびただしい数の隕石,惑星の衝突を繰り返してきている.その衝突の際に,物質内部には衝撃波が発生し,衝撃圧縮による高温高圧状態,その後の破壊が生じる.その際の物質の応答を一つ一つ理解することは惑星進化の過程を解明していく上で大変重要である.本課題では,隕石衝突を模擬した衝撃圧縮下での構造変化過程をその場観察できるシステムを構築し,衝撃高温高圧下での物質の変化を結晶構造レベルで解明していくことを目指している. 該当年度は高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PF-ARの衝撃波発生用レーザーの空間プロファイルを大きく改善した.レーザーの空間プロファイルは発生する衝撃波の空間プロファイルに直接影響するため本実験を行なう上で大変重要となる.これにより衝撃圧縮から破壊に至る過程におきる現象を一つ一つ分けて解析すること可能になり,衝撃下でのダイナミクスを時間軸に沿って理解することができるようになった.該当年度は改善されたレーザーを用いて,衝撃圧縮過程におけるダイナミクスと破壊過程におけるダイナミクスの観察を衝撃下時間分解X線回折測定によって行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イメージ転送法を用いることで空間プロファイルが大きく改善された.転送元のイメージの位置を,真空空間フィルターの後かつガラスレーザーでの増幅後に変更した.転送元イメージのプロファイルを改善することで,flat topビームが得られた.レーザーパルスの時間プロファイルを整えるためにインジェクションシーダーを入れることでビーム内部の干渉が強くなるため,現在はインジェクションシーダーを入れすに実験を行なっている.そのため,レーザー光学系の破損を考慮し,レーザー出力を下げてパルスエネルギー約12 Jで実験を行なっている.本レーザーを用いたアルミニウム試料に対するの実験から衝撃圧縮過程,解放過程のダイナミクスの観察を行なった.試料に用いたアルミニウム箔はもともと配向性を持っており,X線サイズと結晶子サイズの関係から,スポット状の回折点が同心円方向への頻度分布をもって二次元検出器上に見られた.最大衝撃圧20 GPaの衝撃により,各格子面は約15%の圧縮率まで3 ns以下の時間で一気に圧縮された.圧縮時から回折点は同心円方向に広がったが配向性は保たれたままであった.圧縮開始の約10 ns後には解放が始まり,時間とともに回折点は線になったが,解放後も同心円方向への回折強度分布は保たれていた.このことから,結晶面の配向方向は保たれながら,結晶子が微細化し,変形双晶によりX線軸の周りに回転したことが考えられ,多結晶金属試料の衝撃下での構造変化ダイナミクスの一例が明らかになった.また,ジルコニアセラミックスに対する実験も行い破壊過程での構造ダイナミクスの観察を行なった.圧縮過程で高圧相への相転移はなく4%圧縮されたが,解放過程では部分的に単斜晶系への相転移が確認され従来から考えられていた強化機構transformation tougheningが本実験により初めて直接観察された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで多結晶試料のダイナミクスを観察してきたが,今後原子レベルでの動きを見ることを目指し,単結晶試料を用いた測定を行なっていく予定である.多結晶のような結晶粒界がなく,結晶面も一方向に揃った単結晶試料を用いることで圧縮異方性やその変化量など衝撃下での構造変化を考える上で重要となる応答を明確にしていく.しかしながら,単結晶試料はある結晶面がある一方向にしか向いていないために,単色X線ではブラッグ条件を満たす角度に試料を合わせないと回折点は観測されない.そこで,エネルギー幅の広い白色X線と単色X線を相補利用してダイナミクス観察をしていくことを予定している.放射光で実験をしているので,白色X線が使えることが大きな利点である.白色X線ではブラック条件を満たす面間隔の許容幅が広いために,試料の角度を変えずに多くの回折点を一度に見ることができる.また白色X線回折の場合,格子面角度が変化した場合にもその角度に対応したエネルギーの回折点が見られるため,格子面角度に関する情報を得ることもできる.衝撃波の伝播による衝撃圧縮下では一軸圧縮され,ユゴニオ弾性限界を超えたところで多軸圧縮されるようになることが予想されるが,その過程を直接観察した例はない.白色X線回折実験から圧縮軸方向の時間変化を観察していく.一方で,白色X線では圧縮や角度が変わるとそれに対応したエネルギー回折が見えるため,圧縮の変化量を定量的に算出することは難しい.そこで,単色X線を用いて,同実験を行なうことで変化量の算出を試みる.これらから,衝撃波が伝播する際の衝撃圧縮下での構造ダイナミクスを一つ一つ明らかにしていく.
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