2018 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーハドロン反応におけるシングルスピン非対称の解明とハドロン構造の研究
Project/Area Number |
18J11148
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
矢部 健太 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 高エネルギーハドロン反応 / 摂動論的量子色力学 / シングルスピン非対称 / 高次ツイスト / 破砕関数 / ハイペロン偏極 |
Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギーハドロン反応で観測されるシングルスピン非対称の一種である横偏極ハイペロン生成現象に関する研究を行った. シングルスピン非対称は高エネルギー包含過程の伝統的な枠組みであるパートン模型と摂動論的量子色力学では説明できない現象であり,QCDを厳密に用いた微分断面積の定式化手法であるツイスト3機構によって記述できることが知られている.そのためSSA現象の解明はハドロン内部でのパートン分布や相間,さらにはその背後にあるQCDダイナミクスの理解が期待できる.今年度は,シングルスピン非対称として半包含無偏極電子-核子衝突過程(SIDIS過程)及び無偏極核子核子衝突過程における横偏極ハイペロン生成現象に関し,終状態ハイペロンへの散乱パートンの破砕に対するパートン多体相間の効果に着目した. この多体相間効果はクォーク・グルーオン相関及び純粋なグルーオン相関の2種類があり,それぞれ対応するツイスト3破砕関数の寄与として断面積中に現れる. 本研究では偏極ハイペロン生成に関する上記2過程について,ツイスト3破砕関数の寄与する断面積の導出を行った. SIDIS過程の研究では,クォーク・グルーオン相関の寄与に関し,ツイスト3機構によりQCDの結合定数について主要近似(LO)で完全な解析公式を導出した.また純粋なグルーオン相関の寄与に関しては,カラーSU(3)群の構造定数を考慮したツイスト3グルーオン破砕関数の定義付けを新たに行った.その上で,ツイスト3機構に基づき純粋なグルーオン相関の寄与を取り入れた定式化の枠組みを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では,SIDIS過程におけるクォーク・グルーオン相関に寄与の完全な記述と,純粋なグルーオン相関に関しSIDIS過程と核子核子過程に対応した定式化の枠組みを構築することができた.しかし当初の計画ではグルーオン相関の寄与する断面積の完全な導出を目指しており,本年度はそこまで達成することができなかった.これは純粋なグルーオン相関の計算が非常に複雑であり,時間を要したためである.以上のことから研究に進展はみられるものの予定通りに研究を進めることができなかったため,「やや遅れている.」と評した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は前年度に引き続き,横偏極ハイペロン生成過程に関して純粋なグルーオン相関の寄与する断面積の導出を目指す.グルーオン相関の非摂動的効果を担うツイスト3破砕関数には,クォーク場とグルーオンの強度テンソルについて2 体及び3 体の相関関数として書けるものが存在し,それらの間にはQCDの運動方程式やローレンツ不変性による制限があるため,これを考慮したパートン間断面積計算を実行する.両過程の計算ともにハード断面積を表す多くのファインマン図形の解析計算が課題となっており,これを数式計算ソフト上で走るTracer programを用いて実行する.その後,導いた各過程の解析公式をもとに既存の実験データ解析を行い,ハイペロン偏極の発現メカニズムについての描像を得る.
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Research Products
(2 results)