2018 Fiscal Year Annual Research Report
Crystal growth of layer semiconductor gallium selenide for highly efficient THz wave light source
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18J11396
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 陽平 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ガリウムセレン / 層状化合物半導体 / 溶液成長 / 温度差法 / 溶解度 / Self-seeding法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではTHz波光源として優れた特性を有するGaSe結晶の光源実用化を目的として、高品位なGaSe結晶の成長方法の確立と成長した結晶へのデバイス化を行っている。 成長方法の確立に向けて、GaSe結晶の溶液成長における成長速度を高速化する必要があり、GaSeの溶解度が高い溶媒の検討を行った。結果として780℃においてIn溶媒中にはGaSeが57at%溶解することがわかり、濃度勾配も0.23at%/℃と、大きな値を取ることがDTAにより確認された。In溶媒を使用した温度差法によりGaSe結晶を成長することで、先行研究でGa溶媒から成長したGaSe結晶の厚さと比較して18倍厚い5.4mmの厚さの結晶を種結晶なしで成長することに成功した。温度差法で成長するにあたり、線形の温度勾配では溶質の拡散距離が長い場合に拡散途中の核生成が問題となることから、底部ほど拡散速度が速くなるような急峻な温度勾配を用いた。また、層状材料であるGaSeは層水平方向の成長速度が速く、層が別々の方向に成長することで多結晶となりやすいため、水平方向の温度勾配により層の成長方向を揃えるとともに温度勾配に沿って成長した結晶面が優先的に成長するように直径4 mmの細い坩堝を底部に取り付けた。 ヴェガード則から、In溶媒を用いて780℃付近で成長したGaSe結晶中にはInが2.2at%含まれていることが確認された。Inは補償効果によりGaSeの主要キャリアであるホールを削減し、THz波の自由キャリア吸収を抑制すると期待できる。坩堝構造を決定したことで、印加Se蒸気圧制御のための成長容器も設計することができた。 結晶のデバイス化については市販のGaSe結晶に対し、SiO2膜を230nm成膜し、透過測定を行った結果、励起光の波長(1230nm)において成膜後のGaSe結晶の透過率は成膜前の結晶と比較して11.4%増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではGaSe結晶のTHz波光源実用化に向けて、溶液成長におけるGaSe結晶の成長速度高速化と最適な印加Se蒸気圧条件の決定、不純物添加条件の最適化、結晶のデバイス化の4つを進める計画となっている。 これに対し、溶液成長における成長速度の高速化では計画の中で候補に挙げていた溶媒元素の中から、成長速度を高速化することのできる元素を見つけることができ、結晶を安定して成長できる温度条件や組成についても予想を立てることができた。当初は種結晶を用いて成長位置を底部に固定する計画であったが、結晶の加工が難しいことやコストも高いことから種結晶を設置しての試行実験が難しく、種結晶を用いずに成長を進めることとした。結果として坩堝の構造と温度勾配を調整し、種結晶を用いずに底部に成長位置を固定し、層の方向の揃った5.4mmの厚さのGaSe結晶を成長することができた。 一方で、印加Se蒸気圧と添加不純物の条件最適化については単結晶育成条件を確立することができておらず、進行が遅れている。しかし、溶媒として選択したInは自由キャリア吸収抑制に向けた添加物の候補の一つであり、In溶媒から成長したGaSe結晶にはInが2.2at%取り込まれていることを確認していることから、今後はInが添加されたGaSe結晶の電気的、光学的特性についても評価を進める。また、種結晶を用いずに成長を行うための坩堝の構造も決定することができたことから、印加Se蒸気圧を制御するための成長容器の設計も行うことができ、設計した成長容器を用いて印加Se蒸気圧の条件最適化についても行っていく。 結晶のデバイス化では励起光及びTHz波の反射を低減できる膜材料としてSiO2とパリレンを選択し、その厚さについても設計をすることができた。SiO2膜に関しては実際に成膜を行い、励起光波長帯において反射を抑制し、透過率を向上することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階においてIn溶媒から成長するGaSe結晶をTHz波発生に使用するための課題は成長容器底部の径の細い坩堝内でしか層の成長方向を揃えられていないことと結晶内部に溶媒が塊として取り込まれていることである。径の太い坩堝内でGaSe結晶が成長していない原因としては原料が足りないことや最大温度勾配の方向が径の細い坩堝内と太い坩堝内で大きく違うことが考えられることから溶媒に対する原料の比率を増加させ、水平方向の温度勾配を大きくすることで坩堝上下の最大温度勾配の方向を揃える。また、溶媒が塊として取り込まれる原因は成長速度が速いことであると考えられるため、垂直方向の急峻な温度勾配を利用することで、原料がなくなる前に温度差成長が止まるように成長位置を設定し、その位置から自動ステージを用いて低速で成長容器を底部に移動することにより結晶の成長速度を調整する。 溶媒の塊を含まない直径5mm以上の口径の単結晶成長条件決定後、成長温度ごとの結晶内のIn組成をXRD測定により確認し、ホール効果測定、透過測定、SHG、THz波発生を行うことでその電気的、光学的特性を確かめる。 次に印加するSe蒸気圧を変えて、In溶媒からGaSe結晶を成長し、結晶内のSe組成をEDSにより評価する。さらにSe蒸気圧一定の下、自由キャリア吸収の低減を目的としてFe、Ge、Teを複数の添加濃度でIn溶媒中に添加し、成長する。成長した結晶についてはXRD測定、PL測定を行い、GaSe結晶構造内における添加元素の状態を考察する。また、赤外帯とTHz帯の透過測定とSHGから添加元素、印加Se蒸気圧についてTHz波光源材料として最適な成長条件を決定する。 成長した結晶には励起光入射面にSiO2膜を、裏面にパリレン膜を成膜し、成膜した結晶について赤外帯とTHz帯の透過測定とレーザー破壊閾値測定、THz波発生を行う。
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