2018 Fiscal Year Annual Research Report
Active Shape Control of Membrane Space Structures via Distributed Input Utilizing Solar Radiation Pressure
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18J11615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高尾 勇輝 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙膜面構造物 / ソーラーセイル / 太陽光圧 / 分布定数系 / 振動モード解析 / 自励振動 / 分散制御 / 多粒子モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の宇宙開発では,優れた軽量性・収納性を有する,宇宙膜面構造物の研究開発が盛んに行われている.宇宙膜面構造物は多くの場合,二次元構造物として扱われており,これを三次元構造物に拡張することは,その利用可能性を大きく広げるものである.本研究は,太陽光圧を分布入力として与えることで,スピン型の宇宙膜面構造物のアクティブ形状制御を実現することを目的とする.すなわち,膜面の反射率を電気的に切り替え,太陽光圧に起因する周期外力を与えて共振を励起し,さらに,その周波数をスピンと同期させることで,慣性空間で静止した定在波面を形成する.平成30年度の研究では以下の成果を獲得した. 1) 不均一な質量分布を持つ膜面を多粒子系でモデル化し,数値的な振動モード解析を行った.その結果,膜面の質量分布,つまりアクチュエータの搭載位置の変化に伴い,システムの固有振動数が有意に変動することを確認した.その変動傾向を考慮することで,共振周波数が定在波周波数と一致するよう,適切に膜面を設計するための方針を得た. 2) 数値解析の結果,振動状態に応じて共振点が変動するため,一定周期のスイッチングによるフィードフォワード制御では,共振を起こせないことが判明した.そこで,モード速度の正帰還によるフィードバックを用いて,変動する共振点を自動で追尾する,自励振動の制御則を構築した.ここでは,システムの運動方程式を,モード座標とその微分を状態変数とする多入力・多出力の状態方程式に変換し,固有関数が入出力の伝達特性を支配することに着目することで,振動を発散させるフィードバックゲインの最適設計を行った. 3) 以上の研究より,膜面上のアクチュエータの配置が,システムの固有振動数(構造特性)と共振倍率(制御特性)に与える影響が明らかになった.この結果を踏まえ,最も効率よく定在波を励振するための,システム全体の最適化手順を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究は,1)不均一な質量分布を持つ膜面の構造解析,2)太陽光圧入力のスイッチング制御則の構築,3)構造・制御要求を満たすシステムの最適化,の3項目を計画しており,実績として全ての項目を計画通りに実施することができた.特に,2)の制御系設計の過程で,現実のシステムでは共振点が変動することが判明し,当初想定していたフィードフォワード制御では,共振を励起できないことが分かった.そこで,状態フィードバックを用いた共振点追尾コントローラの設計,並びに,それを実現するためのモード座標推定フィルタを導入することで,問題の解決を図った. また,構築した制御理論の検証のため,当初は2年目に実施を予定していた,5)数値シミュレーションによる検証,を一部先行して実施した.ここでは,本特別研究員が過去に作成した,多粒子モデルによる膜面ダイナミクスシミュレータに,膜面要素の光学特性の切り替え機能を実装し,上記で設計した太陽光圧制御システムを組み込んだ.このシミュレータを用いて数値シミュレーションを行ったところ,非線形領域においてシステムの共振周波数が変動していること,そして設計した制御システムがその共振点を適切に追尾していること,が確認できた.特に,このシミュレーションの結果より,振動が成長して非線形領域に入ると,線形領域と比較して大きく挙動が変わることが分かった.さらに,この非線形挙動に対しても,設計した制御器は正しく機能しており,制御システムとしてのロバスト性が確認できた. 以上より,当初予定していた研究項目に加えて,当初想定されていなかった問題に対する解決策も提示することができた.さらに,次年度に予定していた数値シミュレーションを先行して実施することで,様々な力学的現象が明らかになった.そのため,1年目の研究は,当初の計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は,宇宙機のスピンと同期した構造共振を励起することで,慣性空間で波面が静止する定在波を生成可能とすることである.1年目の研究の結果,膜面の構造特性を操作することで,システムの固有振動数を定在波周波数に一致させる見通しが得られた.しかし,質量分布に関するパラメトリックスタディを行ったところ,この構造操作には限界があり,固有振動数を定在波周波数と厳密には一致させられないモードが存在することが分かった.さらに,仮に構造操作によって目標の固有振動数を得られたとしても,共振点の変動効果のため,厳密な定在波とはなりえない. そこで,上述した問題を解決するため,2年目の研究では,周波数フィードバックによる共振点制御を行う.1年目に実施した自励振動の制御則では,システムの極の実部が正値となるようゲインを設計することで,振動の発散を図った.一方,極の虚部は振動の周波数特性を表しており,この値の設計に関しては言及していない.そこで,時変ゲインを扱うレギュレータを設計することで,変動する共振点を定在波周波数に向けて制御することを試みる. 続いて,構築した制御理論の有効性を,真空槽を用いた地上実験によって立証する.JAXA宇宙科学研究所が保有する真空槽を使用し,ステッピングモータを用いて,小型の膜面を真空中で遠心力展開する.地上では重力の効果が強く,太陽光圧を用いた制御は事実上不可能であるため,代替アクチュエータとして,piezo benderを使用する.これは,電圧印加によって曲げ変形を起こす圧電素子である.計測系としては,制御系とは別に用意した圧電素子を用いた歪みセンサ,もしくは高速度ステレオカメラを用意し,膜面の変形状態(モード座標)の推定を行う.制御器・観測器を合わせた,ハードウェアとしての制御システムを構築し,本研究が提案するアクティブ形状制御の理論を実証する.
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Research Products
(3 results)