2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J11799
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沼本 祐太 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 官僚制 / 行政各部 / 行政組織 / 行政組織編成権 / 独立行政委員会 / 副大臣・大臣政務官・大臣補佐官 / 審議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、官僚制に関する研究がわが国の憲法学研究において過少であるとの認識に基づき、この未開発の研究領域を開拓することを目的とするものである。 本年度は、研究課題である官僚制と密接に関わる問題として、憲法72条にいう「行政各部」の編成をめぐる問題を検討した。特に、行政組織編成権に関する研究と、副大臣・大臣政務官・大臣補佐官に関する研究を集中的に行った。 前者に関する研究は、これまでの日本でも多くの研究成果が積み上げられてきた。しかし、行政組織の編成が法律事項なのか命令事項なのかについては、近時でも中堅・若手研究者の間で議論がなされている。そこで、近時の学説について批評を加えると共に、その学説を採用する際に行政実務が受けると思われる影響もあわせて考察した。また、ドイツ及びフランスにおける行政組織編成権についても、日本の制度・理論のより良い理解のため研究した。 これに対して、後者に関する研究は、極少数の優れた業績があるだけで、わが国では従来ほとんどなされてこなかった。しかし、政治主導体制の確立を目指した改革の一要素である副大臣・大臣政務官制度が、いかなる法的設計の下、どの程度当初の目標を達成できたのか、また、目標を達成できなかったとすれば、そこに法制度上の欠陥はないのかを検討することは重要である。そこで、副大臣・大臣政務官・大臣補佐官をめぐる法的制度の現状を検討した上で、その問題点について、ドイツ及びフランスの類似制度と比較することで検討した。 また、本研究に関連して、行政の専門技術的裁量が認められた判例の評釈を行なった。その成果は、沼本祐太「旅券法19条1項4号及び同規定に基づく処分の合憲性・合法性」法学論叢184巻3号(2018年)98頁以下として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、第1に従来の日本の憲法学における官僚制への態度を確認すること、第2に現代の憲法学において官僚制を語ることの意義と限界を確定すること、第3に官僚制の構造についていかなることが日本国憲法から導出できるのかを明らかにすることの3点を当初の研究課題としていた。現在では、官僚制と密接に関係する行政組織の問題について、以上の3点を検討している。 上記「研究実績の概要」において明らかにしたように、本年度は特に、行政組織編成権と副大臣・大臣政務官・大臣補佐官制度について研究を行なった。最終的には、独立行政委員会及び審議会に関する問題を併せて検討することで、本研究をひとまず纏め上げることを予定している。この予定に照らせば、本研究における4つのトピック、すなわち、①行政組織編成権、②副大臣・大臣政務官・大臣補佐官制度、③独立行政委員会制度、④審議会制度のうち、本年度で2つの研究が完了したこととなり、このペースを維持することで、来年度中に本研究を完成させることが可能である。 したがって、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、独立行政委員会及び審議会の研究に時間を割く予定である。本年度の研究から引き続き、日本のこれまでの議論を丹念に追跡した後、ドイツ及びフランスの制度・理論を検討することで、比較による日本の制度・理論の特徴を明らかにし、また、より良い制度構築のための指針を得る。研究の成果は、来年度執筆予定の博士論文で示す。
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Research Products
(5 results)