2018 Fiscal Year Annual Research Report
明治前期における地方認識―歴史・地誌編纂を対象として―
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18J11800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 大悟 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 日本近代史 / 記録管理 / 史誌 / 府県史料 / 皇国地誌 / 郡村誌 / 修史事業 / 地方史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、明治前期の官撰史誌「府県史料」「皇国地誌」について、主に編纂事業の実態に注目して以下の研究を実施した。 1、政府の修史部局が各府県における「府県史料」編纂をいかに管轄したのかを考察し、『東京大学史料編纂所研究紀要』第29号に「修史部局における「府県史料」編纂事業の管理」を発表した。修史部局の修史事業一般と異なり、「府県史料」の編纂管理は記録管理担当官員が行い、彼らが府県との伺・指令を通じて編纂内容を洗練させた。その反面で伺・指令による編纂管理の限界から府県による「府県史料」編纂が停止されると、修史部局自ら編纂を積極的に試みた。以上から「府県史料」を典拠とする際に注意すべき史料の性格を明らかにした。 2、1から派生して、修史部局が集積した公文書や史料・図書類について、どのような記録管理を行ったかを考察し、『国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇』第15号に「明治太政官期の修史部局における記録管理」を発表した。東京大学史料編纂所所蔵「修史局・修史館史料」を用いて修史部局における記録管理制度の形成を明らかにするとともに、正院記録局から歴史課が分課され設置された意義を述べた。以上1、2から、明治政府の記録管理を把握する上で、「府県史料」編纂をはじめとする修史部局の活動に着目する意義を論じた。 3、修史部局の管理を受けて府県で編纂された「府県史料」「皇国地誌」関係史料の調査を行った。本年度は21県30機関の公文書館・図書館等を訪問調査し、史誌の稿本や関係する行政文書を悉皆的に閲覧・撮影した。1でみた修史部局の活動に対応する府県の史誌編輯掛による編纂について分析を進め、府県間での編纂内容の照会や掛の転任といった事例が判明した。府県の稿本と政府へ提出した正本の内容の異同についても把握した。このように、全国に所在する関係史料の確認を行い、来年度以降の研究の基礎作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果の発表と、史料調査の遂行のいずれも、計画以上に進めることができた。 研究成果については、次年度に予定していた「府県史料」編纂に関する論文を発表し、修史部局の記録管理という派生的な課題に関する論文も発表できた。 史料調査については、研究計画作成時に調査した数の倍近くの公文書館・図書館等に関係史料が存在することが判明し、それに合わせて計画を上方修正し、調査を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、全国の公文書館・図書館等が所蔵する関係史料の調査を進める。収集した「府県史料」副本と、国立公文書館デジタルアーカイブで公開されている正本との内容分析・比較を行う。本年度論文を発表した修史部局における編纂管理に対応する、各府県における史誌の編纂過程についても分析を進める。
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