2018 Fiscal Year Annual Research Report
生活時間のジェンダー分析――生活時間のやりくり・組み立て・権利に着目して
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18J11821
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Research Fellow |
柳下 実 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ジェンダー / 生活時間 / ライフイベント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「生活時間のやりくり・組み立て」と生活時間の権利という概念とを組み合わせ、多面的な検討から生活時間にみられるジェンダー不平等を把握する理論枠組みを提出することにある。使用するデータは東京大学社会科学研究所が2007年から実施している働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査、平成18年社会生活基本調査匿名データ、American Time Use Survey、およびヨーロッパの生活時間調査のデータである。 平成30年度は使用するデータの整備をおこなった。まず働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査については、第11波までデータ整備が完了した。次に社会生活基本調査匿名データであるが、分析に必要な起床・仕事のために家を出る・仕事からの帰宅・就寝時刻が匿名データには含まれないことが判明した.さらに公表されている定義からはこれらの変数を作成できなかったため、総務省統計局統計調査部に問い合わせをしつつ、上記の変数を作成し、公表値とほぼ一致する値を得られた。また、そこで利用した手順を用いて、American Time Use Surveyについても、各時刻を作成し、日本とアメリカで比較をおこなった。その結果は、平成31年度にアメリカ社会学会大会で発表する予定である。結果から、日本では女性は、結婚している、子どもが世帯にいると、男性と比べ異なる効果を受けているのに対し、アメリカではそうではないという結果が得られた。このことから国レベルのジェンダー不平等のありようが男女の生活時刻にも影響を与えていることが示唆された。 本年度は働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査を用いた報告を日本社会学会、社研パネルシンポジウム2019で報告し、国内でおこなわれたWorld Social Science Forum 2018でも国際比較データを用いたポスター報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れていると進捗を評価した理由は、データ整備が想定したよりも時間がかかったため、本年度は理論枠組みの検討が十分に検討できなかったことにある。生活時間調査のデータ構造が想定よりも複雑であり、また起床・仕事のために家を出る・仕事から帰宅する・就寝時刻といった本研究の核となる変数が匿名データに含まれていなかったことが主因である。データの整備は平成30年度で十分進めることができた。平成31年度は理論枠組みの検討に費やすことができるため、当初予定からは遅れているものの、研究の進度からいえばある程度の進捗は認められる。以上の理由よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、研究課題1の分析、研究課題2の理論的基礎の検討、および研究課題2の追加分析・執筆をおこなう。研究課題1に使用する働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査のデータは年度末に新しいデータが利用可能になった。そのため追加の基礎分析やデータ整備が必要であるため、それらをおこなう。研究課題2に使用する社会生活基本調査匿名データのデータ整備は終わっているが、平成30年度の検討の結果、さらなる理論的検討が必要なことが明らかになった。そのため、分析より先に理論的な枠組みの再検討をおこなう。研究課題3については社会生活基本調査・American Time Use Surveyを用いた分析を平成30年度におこなった。本年度は、ヨーロッパのデータ、特にスウェーデンの生活時間調査が審査によって許可されれば、利用が可能であることが判明したため、スウェーデンの生活時間調査の利用許可を得られるよう、申請する。データが得られ次第、分析し、執筆した論文に追加する。 研究成果は、平成31年度のアメリカ社会学会大会やイギリスでの研究集会などで報告をおこなう予定である。報告へのコメントや研究の進捗状況によるが、できるだけ早く研究を取りまとめ、学会誌に投稿する。
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Research Products
(3 results)