2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J11828
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
門屋 寿 早稲田大学, 政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 選挙 / 権威主義体制 / 抗議運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、権威主義体制下における選挙に関する問いに答えることである。とくに、①選挙の実施が、その後の権威主義体制の命運にどのような影響を及ぼすのか(民主化を引き起こすのか、それとも権威主義の長期化につながるのか)、②そもそもなぜ権威主義体制下で選挙が導入されたのかという2つの問いに答えるための研究を並行して行っている。 これらの問いに答えるため、独裁者や取り巻きのエリートなどの諸アクターのインセンティブを考慮した理論モデルの構築、第二次世界大戦以降に存在したすべての権威主義体制を網羅したデータセットを用いた計量分析、サブサハラ・アフリカ地域の体制を中心とした比較事例分析を進めている。本年度の研究の結果、2つの問いそれぞれについて興味深い知見が得られた。 まず問い①については、抗議運動の発生に焦点を当てた分析により、選挙には体制の存続を助ける働きがある一方、ときに体制の崩壊を促すことがわかった。具体的には、実施される年には抗議運動が発生しやすくなるものの、ある程度自由公正な選挙経験を積んだ国では、抗議運動が発生しづらくなることが明らかとなった。つまり、抗議運動を増やすことも減らすこともある選挙は、体制にとって諸刃の剣であることが示唆される。 つぎに、問い②については、権威主義体制下における選挙の多くは、独裁者が進んで導入させるものではないということがわかった。ほとんどの選挙は、体制が国内外からの圧力を受けている場合や、独裁者が取り巻きのエリートからの制約を受けている場合に導入させたのである。この結果は、少なくとも選挙導入の段階においては、体制を維持するための道具として独裁者が選挙を好き好んで選択するわけではないことを示唆している。 本研究の意義は、権威主義体制下での選挙という、一見非合理にも思える現象の意味を深く検討することで、選挙についての知見を積み上げることにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①選挙の実施が、その後の権威主義体制の命運にどのような影響を及ぼすのか(民主化を引き起こすのか、それとも権威主義の長期化につながるのか)、②そもそもなぜ権威主義体制下で選挙が導入されたのかという2つの大問いに答える論文を出版することはかなわなかったものの、それぞれについて一定水準の学会報告および論文投稿を行うことができたと考えるため。 問い①については、この大きな迫るためより細かな分析と位置付けた研究論文を、日本比較政治学会にて報告した。この論文は日本比較政治学会のジャーナル、『比較政治研究』に採択された。問い②については、論文投稿には至らなかったものの、日本選挙学会、International Political Science Association、Waseda ORIS International Symposiumにて報告した。これらの学会で受けたフィードバックを論文に反映させているところである。 これらの問いに答えるための研究を進めていくにつれ、権威主義体制下で実施された現実の選挙に関する知識が不足しており、現実への知識を深める必要があることを痛感した。そのような問題意識の下、第二次世界大戦以降に全世界の権威主義体制下にて実施された国政選挙の結果およびコンテクストのデータ収集を進めることができた。現時点では完成とはいいがたく、データセットを公開する段階にはないものの、上記2つの問いおよび権威主義体制下における選挙という現象に迫るにあたっての基礎的な知識を身に着けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様に、①どのような権威主義体制で選挙が導入されるのか、そして②選挙の実施が体制の命運にどのような影響を及ぼすのかという2つの問いに応えることを目指す。そして、これらの問いに答える論文を投稿する。 論文の投稿に向けて、まずはこれらの現象を説明する理論モデルの構築に注力したい。そのためにはやはり、現実において権威主義体制下における選挙がどのように実施されてきたのかをより深く知る必要がある。そのため、引き続き権威主義体制下にて実施された国政選挙の結果およびコンテクストのデータ収集を進めていく。最終的には、収集したデータをデータセットとして公開することを視野に入れている。選挙の関する十分な知識を持ったうえで、一般化、理論化を行う。 理論モデルを修正したのち、学会報告にのぞむ。すでに内定している6月の日本比較政治学会、7月の日本選挙学会、10月の日本政治学会で報告をし、フィードバックを受ける。受けたフィードバックを年度中に反映させ、すみやかに論文の投稿を行う。
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Research Products
(7 results)