2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J12281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
北原 圭一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 源氏物語 / 贈答歌 / 古今和歌集 / 後撰和歌集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『源氏物語』が贈答歌を人物関係や場面を描写する方法としてどのように利用しているか、その虚構の方法を考察するために不可欠な前段階として、平安時代の実態としての贈答歌の仕組みを探る目的から、『古今集』『後撰集』などの勅撰和歌集や同時代の私家集の贈答歌における贈歌・答歌間の対応関係を幅広く調査した。 中でも、『古今集』『後撰集』それぞれが採録している贈答歌の差異について、返歌が贈歌と同じ表現を用いつつ反発する内容をどのように導き出しているか、という観点から分析することで明確にした。具体的には、『古今集』の贈答歌に、贈歌の表現自体が持つ連想・多義性を利用して意味や用法などを転換することで反発の契機を導き出すという、共通する返歌の志向が見られること、『後撰集』はそれに加えて、贈歌の表現の多数を贈歌と同じ意味でそのまま繰り返して用いるという『万葉集』以来の初期的な形式の贈答歌をも多く収めていることを明らかにした(「『古今集』『後撰集』の贈答歌の方法―贈答歌採録基準の差異を中心に―」、『国語と国文学』96-10、2019年10月掲載決定)。 一方、この調査の過程で、各歌集に収められた贈答歌が、必ずしも同時代の贈答歌の実態や典型的性格の直接的な反映であるとは限らないことも分かり、その一例として、『後撰集』の贈答歌の中に、編纂時や書写段階において表現や形態に手が加えられた可能性のあるものが含まれていることを示した(「『後撰集』の贈答歌の虚構性について―私家集・歌物語との比較を手掛かりに―」、『東京大学国文学論集』14、2019年3月)。今後はこのような各歌集の贈答歌採録の作為という点も勘案しつつ、平安貴族社会において和歌の贈答が実際にどのようになされていたのか、それを『源氏物語』がどのように利用して物語を描いているのかについて、考察していく予定である。
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Research Progress Status |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Research Products
(4 results)