2018 Fiscal Year Annual Research Report
光応答性を示す集積型ペンタシアノニトロシル錯体における強誘電性と強磁性の光制御
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18J12325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小峯 誠也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 分子磁性 / 非線形光学効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質の磁気特性や誘電特性を光などの外部刺激によって制御することは化学や物理などの様々な分野で精力的に研究が行われている。本研究は、光により誘電特性と磁気特性の両方を制御することを目的としている。今年度の研究においては、分極構造を有する磁性体の合成を目的として新規錯体の合成を行い、2種類のシアノ架橋型錯体の合成を行なった。1つは光応答性の部位となりうるニトロシル基を有するペンタシアノニトロシルモリブデン酸イオンとランタノイドイオンを組み合わせたシアノ架橋型錯体[Ln(dmf)6][Mo(CN)5(NO)] (Ln = Ce, Pr, Nd, Sm, Tb, Dy, Ho, Er, dmf = N,N-ジメチルホルムアミド)を合成し、物性の評価を行った。単結晶構造解析によってこれらの化合物はすべて中心対称性を持たない分極構造を有することが明らかになった。一連の化合物において第二高調波発生の観測を行い、光測定によってもこれらの化合物が中心対称性を持たない構造であることを示した。 2つめは、オクタシアノタングステン酸イオンとマンガン三核錯体が交互につながった珍しい構造を有するシアノ架橋型錯体を合成し、物性の評価を行った。磁気特性を調べることにより、マンガン-マンガン間及びマンガン-タングステン間の2種類の反強磁性的な相互作用の存在を分子磁場理論により示し、この錯体が磁気相転移温度が20 Kのフェリ磁性体であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新規のランタノイド-モリブデンシアノ架橋型錯体の合成に成功した。これらの錯体は光応答性部位になりうるニトロシル基を有しているとともに、中心対称性を持たない分極構造を有することから光応答性や誘電特性を示すことが期待できる。したがって、今年度の研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ランタノイドイオンとペンタシアノニトロシルモリブデン酸イオンを組み合わせることにより分極構造を有する錯体の合成に成功した。今後は、新規な分極構造を有する物質の探索を行うとともに、これまでに合成した物質を用いて誘電特性及び磁気特性の光応答性の検討を行う予定である。また、物質の分極に関してさらなる知見を得るために単結晶試料を用いた第二高調波発生の測定やGaussian等の分子軌道計算も行う予定である。
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