2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the translation machinery to incorporate multiple D-amino acids into a peptide via alteration of the ribosome tunnel
Project/Area Number |
18J12342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田島 研也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 翻訳系 / D-アミノ酸 / ペプチド新生鎖 / リボソーム / ペプチジル-tRNA / L-プロリン / EF-P |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ペプチド鎖へのD-アミノ酸導翻訳効率を指標としてペプチド新生鎖配列を分類し、任意のペプチド新生鎖に対して効率よくD-アミノ酸を導入可能なトンネル改変リボソームの開発を目指す。今年度は、研究実施計画に示した「ペプチド新生鎖配列がD-アミノ酸連続導入効率に及ぼす影響の網羅解析」に取り組んだ。D-アミノ酸同様ペプチドへの連続導入効率が低いL-プロリンを再構成無細胞翻訳系で3残基連続導入する際に、各ペプチド新生鎖配列でのペプチジル-tRNAの脱落を定量し、ペプチド新生鎖配列依存的な導入効率変化を評価する系を構築した。8420種類のペプチド新生鎖配列を評価した結果、1残基目のL-プロリンの直前のアミノ酸が極性・帯電性の場合導入が抑制され、疎水性・側鎖が小さい場合導入が促進された。これは任意に選んだ20種類の配列を個別に合成して得た翻訳産物の定量結果と合致し、構築した系の信頼性が担保された。また列間で最大200倍以上の導入効率の差が見られ、ペプチド新生鎖配列依存的なプロリン導入効率の制御という新たな知見を得た。構築した系は容易にD-アミノ酸導入効率の評価に転用可能であり、幅広いペプチド新生鎖配列に対するD-アミノ酸導入効率の評価が期待できる。 上記の研究と並行してL-プロリンの連続翻訳導入に失敗した際に起きる現象の詳細を解明した。まず再構成無細胞翻訳系で脱落したペプチジル-tRNAの検出を試みた結果、プロリンの連続導入に応じたペプチジル-tRNAの脱落を世界で初めて解明した。またL-プロリンの連続導入を促進するタンパク質EF-Pを欠損した大腸菌(国立遺伝研NRBPより譲渡)で、L-プロリンを連続して含むタンパク質を発現しその配列を分析した。その結果、N-末端数残基を欠損したタンパク質が検出され、大腸菌内でL-プロリン連続導入によるペプチジル-tRNAの脱落を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は「ペプチド新生鎖配列がD-アミノ酸連続導入効率に及ぼす影響の網羅解析」に取り組んだ。D-アミノ酸同様ペプチドへの連続導入効率が低いL-プロリンを用いて、ペプチド新生鎖配列が導入効率に及ぼす影響を網羅的に解析した。D-アミノ酸またはL-プロリンの連続導入に失敗した場合、ペプチド新生鎖とtRNAがリボソームから脱落し翻訳がmRNAの途中から再開してN-末端側を欠損したペプチドが合成される。RaPIDシステムと呼ばれるスクリーニング系を応用しL-プロリンの導入効率を指標としてペプチド新生鎖配列を選別し、L-プロリン翻訳導入効率に及ぼす影響を網羅的に解析した。8420種類のペプチド新生鎖配列を評価した結果、1残基目のL-プロリンの直前のアミノ酸が極性・帯電性の場合導入が抑制され、疎水性・側鎖が小さい場合導入が促進された。現在、この系をD-アミノ酸導入効率評価に用いる検討中である。 上記の研究と並行して、翻訳系でL-プロリンの連続導入に失敗した場合に起きる現象の解明にも取り組んだ。まず試験管内翻訳系でリボソームから脱落したペプチジル-tRNAの検出を試みた。L-プロリンを3残基連続して含むペプチドを発現したのち酵素で処理した後LC-MS/MSで分析した結果、ペプチジル-tRNA脱落の証拠を得た。次に、大腸菌でタンパク質へL-プロリンを連続導入した際にペプチジル-tRNAが脱落するか検証した。L-プロリンの導入を促進するEF-Pタンパク質を欠損した大腸菌株を用いてL-プロリンを連続して含むタンパク質を発現した。精製したタンパク質をプロテアーゼで消化した後LC-MS/MSで分析した結果、N-末端数残基を欠損したタンパク質由来のペプチド断片が観測された。現在この大腸菌株にプラスミドを用いてEF-Pを導入し、N-末端数残基を欠損したタンパク質の合成が抑制されるか検証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、多様なペプチド新生鎖に対するD-アミノ酸導入効率を網羅的に解析し、結果に基づいて構築したトンネル改変リボソームを用いてD-アミノ酸翻訳導入効率を評価する。昨年度までに構築したL-プロリン連続導入効率のペプチド新生鎖配列依存性を評価する系を転用し網羅的に解析する。野生型リボソームを含む再構成無細胞翻訳系で、ピューロマイシンと結合されたmRNAライブラリを翻訳してペプチド新生鎖ライブラリを合成し、D-アミノ酸連続導入効率の高い配列を選び出す。D-アミノ酸は、D-セリン、D-アラニンまたはD-グルタミンをそれぞれ別個に2残基連続で導入する。D-アミノ酸連続導入に成功したペプチド新生鎖のみにピューロマイシンを介してmRNAを結合し逆転写したのち回収する。得たcDNAを次世代シークエンサーで解析し、D-アミノ酸導入効率を指標にしてペプチド新生鎖が及ぼす影響を評価する。個々のペプチド新生鎖配列へのD-アミノ酸連続導入効率をLC-MSで評価し、ペプチド新生鎖配列がD-アミノ酸導入効率を制御することを確認する。 次に、ペプチド新生鎖と相互作用するリボソームトンネル構成要素を改変した変異体大腸菌リボソームを構築する。リボソームトンネル中の23S rRNAとリボソームタンパク質(RP) L4及びRP L22に改変を施す。これらのrRNAまたはRPの遺伝子に変異を加えた大腸菌を発現し、変異体リボソーム1種類ずつにD-アラニンの連続導入を試み、導入効率をLC-MSで評価し導入効率が高い個体を探索する。高い導入効率を示したrRNAとRPの変異情報を獲得し、複数の変異を組み合わせた変異体リボソームを調製してD-アラニン連続導入効率を評価する。最も高い導入効率を示す変異体リボソームが野生型リボソームで導入効率が低いペプチド新生鎖にも効率よくD-アミノ酸を導入することを確認する。
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