2018 Fiscal Year Annual Research Report
中心体アペンデージ構造が担う生体恒常性維持システムの分子基盤
Project/Area Number |
18J12466
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柏原 宏香 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 中心体 / アペンデージ構造体 / 超解像度顕微鏡 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中心体/基底小体に付属するアペンデージ構造(subdistal appendage; SAP)を起点とした細胞の機能制御と骨格構築の分子機序を包括的に理解することを目的としている。 これまでに、SAP構造を構築する分子基盤を明らかにし、論文として研究成果を報告した。さらにSAP構成タンパク質Cep128の発現抑制が細胞周期の進行をG1/S期で停止することを見出した。本年度は、当初の研究計画どおりS期進行に関わる細胞周期制御因子と中心体とのかかわりについて解析を進めてきた。その結果、Cep128とS期進行に関わる細胞周期制御因子が細胞内で相互作用することが明らかとなり、さらに、Cep128発現抑制細胞ではこの細胞周期制御因子の中心体への局在が減少することを見出した。アペンデージ構成分子と細胞周期制御因子との相互作用関係については現在までに例がなく、本研究の遂行は、Cep128機能の解明のみならずSAP構造の新たな機能の提唱へと繋がる可能性を秘めている。 また、申請者の所属研究室では多繊毛細胞を含む上皮細胞でSAP構造と細胞表層の骨格構築とのかかわりについて解析してきたが、それらを繋ぐ分子基盤は明らかでない。そこで次年度では、一般上皮細胞においてCep128を発現抑制し、SAP構造が寄与する細胞表層の機能制御ならびに骨格構築の詳細な分子機序の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)S期進行に関わる細胞周期制御因子と中心体とのかかわり Cep128とS期進行に関わる細胞周期制御因子が細胞内で相互作用することが明らかとなり、さらに、Cep128発現抑制細胞ではこの細胞周期制御因子の中心体局在が減少することを見出した。 2)SAP構造と細胞表層の骨格構築とのかかわり 細胞表層の骨格構造は分化に伴い発達するため、siRNAによる発現抑制系では長期的な解析が困難であるという問題点を抱えている。そこで、次年度の研究計画案の遂行に向けて、すでにいくつかの細胞種でCep128ノックアウト細胞株の樹立に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)S期進行に関わる細胞周期制御因子と中心体とのかかわり in vitroでのCep128とS期進行にかかわる細胞周期制御因子の結合の検討やCep128発現抑制における細胞周期制御因子の活性について引き続き評価を行い、Cep128が司る細胞周期制御機構の解明を目指す。 2)SAP構造と細胞表層の骨格構築とのかかわり 申請者の所属研究室では多繊毛の協調運動にSAP構造と細胞表層微小管との相互作用が必要であることを示しており、さらに、SAP構造を欠く多繊毛上皮細胞では細胞表層微小管網が消失すること、ならびに細胞表層の骨格構築が乱れることを見出している。しかしながら、SAP構造と細胞表層微小管網とを結びつける分子機構については明らかになっていない。そこで本研究では、SAP構造と微小管の相互作用機序の解明を目指して、SAP構成タンパク質と微小管結合タンパク質との細胞内共沈実験を行い、SAP構造と微小管を繋ぐ因子を探索する。また、細胞表層の骨格構造は分化に伴い発達するため、siRNAによる発現抑制系では長期的な解析が困難であるという問題点を抱えている。そこで、Cep128ノックアウト細胞株の樹立を試み、Cep128を欠損させたときの細胞骨格の変化について、細胞表層に焦点を当て免疫染色法などで検討する。以上の解析から、SAP構造を起点にした細胞の機能制御ならびに骨格構築について包括的な理解を目指す。
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