2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺癌検体を用いたゲノム・メタボローム解析によるバイオマーカー・治療標的の解明
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18J12516
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
増澤 啓太 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 非小細胞肺癌 / 糖ヌクレオチド / 糖鎖 / フコシル化 / レクチンアレイ / 転移能 / がん代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞では旺盛な増殖や転移を支えるため、代謝様式を改変する代謝リプログラミングが起きている。我々は、肺癌に特徴的な代謝因子、パターンを明らかにするため、肺癌手術症例で癌部組織と非癌部組織をペアで保存するバイオバンク検体を用いて代謝を評価する事にした。 非小細胞肺癌全9症例由来の癌部・非癌部組織合わせて18検体分のメタボローム解析を行った。また、同じ検体を用いて癌組織内における代謝因子の分布を明らかにするためImaging mass spectrometry (Imaging MS)を用いた解析も行った。 得られた代謝産物の定量データから主成分解析を行うとanionの代謝産物、cationの代謝産物ともに癌部と非癌部で代謝プロファイルが異なる事が明らかになった。特に、癌部組織では、糖鎖修飾の基質となるGDP-L-fucoseを含めた糖ヌクレオチドが非癌組織と比較して上昇していた。そこで、バイオバンク検体を用いてレクチンアレイにより糖鎖プロファイリングを行った所、肺癌組織でフコシル化糖鎖が上昇していた。またGDP-fucose合成酵素であるGMDS, TSTA3やフコース転移酵素であるFUT3の発現が肺癌組織で有意に上昇していた。 肺癌特異的な糖鎖が肺癌の進展にどう関与しているかを明らかにする為、in vitroでの実験を行った。GDP-fucose合成酵素の阻害活性を有する6アルキニルフコースは一部の肺癌細胞株の増殖能、浸潤能を抑制した。また、FUT3の発現がないA549にFUT3を過剰発現させた所、コントロールと比較して浸潤能を増大させた。既報の肺癌切除症例のデータベースを解析した所、FUT3高発現群は低発現群と比較して予後不良であった。今後はフコシル化のキャリアプロテインに注目して実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオバンクの肺がん臨床検体を用いて、包括的なメタボローム解析によりがん組織における特異的な代謝パターンが正確に同定できることが明らかとなった。申請者は肺癌において上昇していたGDP-L-fucose合成経路に着目し、肺癌の増殖能・浸潤能に関与している事をin vitroの実験で明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①in vivoでの検証、②Tissue Micro Arrayを用いた癌組織におけるフコシル化の局在、③フコシル化が肺癌の浸潤能を増大させるメカニズム、④フコシル化のキャリアプロテインに注目して実験を進めていく予定である。
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