2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J12607
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 道俊 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 緊縮応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
緊縮応答は,ppGppとよばれる特殊な核酸分子によって制御され,ほとんどの細菌において保存されている栄養応答の一種である.近年の研究において,栄養応答だけでなく,抗生物質や熱ストレスなどのストレス応答や細胞分裂にも関与していることがわかっており,細菌がストレスを対処するうえで重要な物質の一つである.このppGppを代謝する酵素が動物にも保存されており,その変異体では栄養欠乏耐性が低下することが報告された.しかし,動物の内生のppGppは検出されておらず,得られた表現型がppGpp由来のものであるかは分かっていない. 本研究は動物由来のppGppの定量を通して動物型の緊縮応答の存在証明を行い,その作用機構を解明することを目的としている.動物が内生のppGppを合成し,ppGppを介した緊縮応答が動物の栄養応答に重要な役割を果たすことが証明されれば,その成果は,動物における新規栄養応答研究の先駆けとして重要な基盤研究となる. 今年度は,植物の解析で用いられてきたLC-MS/MSによるppGppの定量系を,ショウジョウバエに応用できるように条件検討を行った.その結果,ショウジョウバエにおいてppGppが存在することを示唆する結果を得ることができた.また,枯草菌由来のppGpp合成酵素YjbMをショウジョウバエに発現させたところ,致死性を示すことが示唆された.このショウジョウバエ中のppGppを定量すれば,最適化された条件の正しさ及び内生のppGppの存在を示すことができる. また,動物はppGpp分解酵素のみが知られており,合成酵素についてはまだ見つかっていない.このことから,マウスのcDNAを用いてppGpp合成酵素の探索を行ったが,未だ候補となる株の単離には至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,ショウジョウバエにおけるppGpp定量を行う条件検討が概ね順調に進行し,様々な条件下におけるppGpp量の変化を追跡することに成功している.また,ppGppの過剰発現体が致死性を示したことから,ppGppが生体内において機能を有していることが示唆される.次年度においてppGppの役割についてより深く解析することができれば,当初の目的を達成することができると考えられる. また,マウスのcDNAライブラリーを用いたppGpp合成酵素の探索は難航しており,まだppGpp合成を行いるタンパク質の単離には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まずYjbM過剰発現体のppGppを定量することによってまず実験系の正確性を検討する.さらに,発生段階や栄養条件に応じたppGppを定量することで,ショウジョウバエがppGppを増減させる条件を見つけ,ppGppの持つ機能を明らかにする. 動物におけるppGppの合成酵素については,今後も実験を行い,酵素候補の単離をすることを目指す.
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Research Products
(2 results)