2018 Fiscal Year Annual Research Report
土壌に過剰蓄積したリンの潜在的な可給性評価に向けた高分子有機態リンの同定
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18J12684
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小林 和樹 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌 / 有機態リン / 高分子 / 核磁気共鳴分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌の有機態リンの解析の向上に向けて同定技術を開発した。土壌に含まれるリンの溶出挙動は、リンの化学種によって大きく異なる。有機態リンは、化学種によって土壌への蓄積しやすさや生分解性が異なるため、有機態リンの化学種を特定することが重要になる。土壌の有機態リン化学種の同定には、31P を核種とした溶液核磁気共鳴(1D 31P NMR)分光法が用いられてきたが、土壌の有機態リンのピーク分離は難しく、化学種の同定には不確実性が伴う場合が多い。本研究は、有機態リンの同定精度を向上させる新たな分光法技術を確立することを目的とし、今年度は以下の2点に取り組んだ。 1.土壌に含まれる有機態リンの化学種同定に向けた2次元1H-31P 核磁気共鳴分光法の導入:土壌に含まれる有機態リンの同定精度を向上させるために、2次元NMRを導入した。実際に同定することができるかを検証するために、分類体系が異なる6種類の土壌を用いた。2D 1H-31P NMR分光分析によって、複数の土壌からmyo-イノシトール六リン酸(IHP)、scyllo-IHP、およびウリジン3’一リン酸の存在が確認された。すべての土壌から、化合物形態が未知のシグナルも多数検出され、様々な有機態リン化学種が存在していることが示唆された。1D NMRでは同定が不確かな化学種も、2D NMR分析によって確実に同定することが可能になった。 2.異なる肥料を長期連用した土壌に含まれる高分子有機態リンの化学特性の解析:23年にわたって異なる管理をした土壌(化肥区、堆肥区、森林区)に含まれる高分子有機態リンの化学状態を特定するために、1D 31P NMR分光に分子サイズ分画を組み合わせて検証した。畑地として利用することによって、有機態リン濃度が増加するのに加えて、10kDa以下の有機態リン化学種が顕著に増加していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標である高分子有機態リンの化学特性を解明した同定手法の確立に向けた準備を着実に進めており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
リン可給性評価に向けた高分子有機態リンの生分解性試験、ならびに2次元NMR情報のライブラリー構築に着手する。
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