2018 Fiscal Year Annual Research Report
核融合プラズマにおけるアルヴェン固有モードの中性子放出スペクトルへの影響
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18J12685
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 翔太 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 核融合プラズマ / イオン速度分布関数 / 中性子放出スペクトル / アルヴェン固有モード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、磁場閉じ込め核融合プラズマにおいて不安定化されたアルヴェン固有モードのイオン速度分布関数、核融合反応率係数、及び核融合反応で生成される中性子の放出スペクトルへの影響を明らかにすることである。 今年度は、アルヴェン固有モードによる磁場揺動を考慮しイオン分布関数及び中性子放出スペクトルを評価する数値解析モデルを構築し、ITER級重水素-三重水素プラズマを想定した解析を行った。不安定化されたモードが存在する領域で、イオン速度分布関数はMaxwell分布から歪み、磁力線と同方向及び逆方向に非Maxwell成分を形成することを示した。分布関数の変化によって、局所的に核融合反応率係数が増加し、条件によっては核融合出力が全体として数パーセント程度上昇し得ることを指摘した。本解析では単一のモードを想定したが実際のプラズマには複数のモードが存在しているため、核融合出力の上昇は更に大きくなる可能性がある。核融合炉の運転に先立ち、今後アルヴェン固有モードが不安定化された場合の核融合出力への影響を明らかにすることが重要である。燃料イオン分布関数に非等方的な非Maxwell成分が形成されることによって、中性子放出スペクトルも非等方的になり、トーラスの接線方向に放出される中性子が特徴的なエネルギースペクトルを持つことを示した。この特徴的な中性子スペクトルはイオン分布関数の形状を反映したものであり、磁場揺動と同時に計測することで、数値解析によって示したイオン分布関数のアルヴェン固有モードによる変化を実験によって確認できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値解析コードの開発及び整備、ITERを想定したイオン分布関数、核融合反応率係数及び中性子放出スペクトルの評価を当初の計画として掲げた。その目的は、アルヴェン固有モードによってイオン分布関数と中性子放出スペクトルがどのように変化するのかを定性的に明らかにすることであり、この目的の達成に必要な数値解析コードを開発した。開発したコードを用いてイオン分布関数及び中性子放出スペクトルを評価し、分布関数の磁力線方向と逆方向に非Maxwellテイルが形成され、中性子放出スペクトルはトーラスの接線方向に特徴的なエネルギー成分が形成されること、また、それらの磁場揺動振幅と周波数依存性を明らかにした。これらに加え、開発したコードの妥当性の検証を目的とした実験データとの比較についても検討を始めており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した数値解析コードには、いくつかの仮定や近似が含まれている。これらはイオン分布関数と中性子放出スペクトルの定性的な変化を示すには十分だが、実験の予測や解析を行うためには、より実際に近い解析が行えるように改良する必要がある。来年度は、複数のモードの時間発展、及び任意の速度分布関数に従う粒子とのCoulomb散乱による着目粒子の速度変化を考慮できるように改良を行う。また、開発したコードの妥当性を検証するために、数値解析結果と実験データとの比較を行う。まずは実験を行いやすい、中性粒子ビーム入射加熱によって形成される分布関数と中性子放出スペクトルを対象とするのが良いと考えられる。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置において、中性粒子ビーム入射加熱に起因した中性子放出の非等方性が観測されており、その実験データを開発したコードを用いて解析し、妥当性を検証する。
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Research Products
(4 results)