2018 Fiscal Year Annual Research Report
重症インフルエンザウイルス感染症におけるADAM10の保護的機構の解明
Project/Area Number |
18J12875
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡森 慧 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、概ね計画通りに研究が進行した。その成果を、研究実施計画に記載した内容に照らして報告する。 1)重症インフルエンザウイルス感染マウスモデルの作成とADAM10コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討:骨髄球系細胞特異的にADAM10がノックアウトされるAdam10flox/flox LysM-Cre+(Adam10ΔLyz2)マウスおよび対照群としてAdam10flox/floxマウスに、インフルエンザウイルスを経鼻感染させた。その結果、Adam10ΔLyz2マウスでは感染後の死亡率が悪化した。これらの結果から、骨髄球系細胞のADAM10がインフルエンザウイルス感染で保護的に働いていることが確認された。 2)CD11b+F480+細胞やCD8+T細胞の機能解析:フローサイトメトリーでの評価により、Adam10ΔLyz2マウスの感染後肺では、CD11b+F4/80+のマクロファージ系細胞が増加し、CD8+T細胞が減少していることを確認した。このCD11b+F4/80+細胞における各種mRNA発現をreal-time PCRにて評価したところ、Adam10ΔLyz2マウスの肺CD11b+F4/80+細胞では、Arg1の発現が著明に亢進していた。養子移入実験により、Adam10ΔLyz2マウスの肺F4/80+細胞は、インフルエンザウイルス肺炎後の死亡率を悪化させる傾向を認め、本感染モデルにおいて重要な役割を担っていることが示唆された。 3)CD11b+F4/80+細胞におけるarginase1高発現の意義に関する検討:arginase阻害剤の腹腔内投与により、Adam10ΔLyz2マウスの感染後の予後が改善することを確認した。 以上から、骨髄球系細胞のADAM10がインフルエンザウイルスで保護的役割を果たす機序において、マクロファージ系細胞のArg1発現制御が関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載した通り、平成30年度は研究実施計画通りに研究を進行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度も、研究実施計画に沿って研究を進める予定である。 まずは、ADAM10によるシェディングの標的となる蛋白質を探索する。Adam10ΔLyz2マウスの骨髄球系細胞表面では、ADAM10によるシェディングを免れた膜型蛋白質の発現が、対照マウスに比べて亢進していることが予測される。これらをフローサイトメトリーで評価することで、本感染モデルで中心的役割を担う膜型蛋白質を同定する。特に、ADAM10でシェディングされ、かつインフルエンザウイルス感染の病態と関与することが報告されている、RAGEやNotchは重要な候補と考えている。さらに、インフルエンザウイルス感染患者の肺胞洗浄液及び血液、剖検肺を用いて、ADAM10と標的蛋白質を評価し、対照群や重症度に応じて比較検討する。 これらの実験により、インフルエンザウイルス感染において、骨髄球系細胞のADAM10が担う保護的役割の詳細なメカニズムを解明することを目指す。
|