2018 Fiscal Year Annual Research Report
The moderating effect of culture and morality on the relationship between prosocial behavior and well-being
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18J13021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
GHERGHEL CLAUDIA EMILIA 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 向社会的行動 / 文化 / 動機づけ / 基本的心理欲求 / モラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、親切行動の実行と実行者のポジティブ感情の関連を検討する3つの研究を実施した。 研究1では、三つの国(ルーマニア、日本、アメリカ)において、親切行動を行う動機づけとポジティブ感情の関連を検討した。親切行動の受け手との関係性や文化を問わず、親切行動を行う意欲がポジティブ感情を高めることが明らかとなった。相手が親友の場合、他者期待もポジティブ感情を高めた。さらに、日本においてのみ、受け手が知人の場合でも、他者期待がポジティブ感情を高める結果となった。この結果から、知人の期待にこたえることが、親切行動実行者にポジティブな影響をもたらすかどうかは、文化や道徳的な価値観によって異なると考えられる。 研究2では、なぜ親切行動がポジティブ感情を高めるのかという心理メカニズムを検討した。三つの国で利用できる親切行動の実行頻度を測定する尺度を作成し、実行頻度とポジティブ感情を説明する要因を調べた。親切行動をより頻繁に実行する者は、他者とのつながりをより強く感じ、自身がより能力のある、自律的な人間だと実感することによって、高いポジティブ感情を経験しているというプロセスが示唆された。この研究では、親切行動を実施することで基本的心理欲求が充足され、ポジティブ感情の経験につながるという一連のプロセスが明らかになった。 研究3では、過去に行った親切行動を思い出すことでポジティブ感情が高まるかどうかを検討した。日本人とアメリカ人の実験参加者を過去の親切行動を思い出すグループと、他者との会話を思い出すグループという二つの群に分けて、その出来事の詳細を記述するように求めた。その後、両グループが現在のポジティブとネガティブ感情、心理的欲求充足の程度を評価した。研究1,2の相関研究と異なり、研究3では実験的な手続きを用いたため、親切行動の実行とポジティブ感情の因果関係を特定できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点では、2つの研究(研究AとB)を三つの国(アメリカ、日本、ルーマニア)において実施する計画を立てていた。しかし、ルーマニアでのデータ収集が困難であったため、研究Bは日本とアメリカでのみ、実施することになった。研究Bをルーマニアで実施することができなかった点以外、研究遂行上での問題はなく、おおむね計画どおりに進んでいる。 研究Aの目的は、向社会的行動とウェルビーイングの媒介プロセスを検討することであった。この研究を三つの国で実施した。研究Aの結果は立てていた仮説を支持するものであった。 研究Bの目的は、過去に行った向社会的行動を回想することでポジティブ感情が高まるかどうかを検討することであった。アメリカと日本においてデータ収集が完了し、現在データ分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
向社会的行動がウエルビーイング(WB)を促進するプロセスや文化の影響を明らかにするために,四つの国(日本,香港,アメリカ,ルーマニア)のサンプルを使用し,実験研究を実施する。 実験の目的は向社会的行動とWBの関連に対する動機づけ,文化とモラリティの調整効果を検討することである。実験では、参加者は向社会的行動を行い,実験者がその動機づけ(自律的・強制的)を操作し,動機づけの種類によって,向社会的行動を行った後に感じるポジティブ感情に違いがあるかどうかを検討する。動機づけの効果に対する文化の影響を検討するために,自律性に基づいたモラリティが顕著である西洋の文化(アメリカ,ルーマニア),義務に基づいたモラリティが顕著である東洋の文化(日本,中国)を比較する。さらに,義務的な倫理への賛同を測定し,モラリティの役割を検討する。 仮説は以下の通りである。①文化を問わず,自律的な動機づけにもとづいて行った向社会的行動がポジティブ感情を促進する②強制的な動機づけにもとづいて行った向社会的行動が東洋の文化においてのみ,ポジティブ感情を促進する③強制的な動機づけにもとづいて向社会的行動を行った参加者の場合には,義務的な倫理への賛同がポジティブ感情を予測する。
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