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2018 Fiscal Year Annual Research Report

『ナジャ』からみるシュルレアリスムにおける遊戯の射程

Research Project

Project/Area Number 18J13036
Research InstitutionKyoto University
Research Fellow 藤野 志織  京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywordsアンドレ・ブルトン / シュルレアリスム / フランス文学 / 遊戯 / ドキュメンタリー / 写真 / 都市 / シチュアシオニスト
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、アンドレ・ブルトンの『ナジャ』の読解を基軸として、シュルレアリスムにおける遊戯の位置づけを明らかにすることである。ブルトンの代表作である『ナジャ』には、言葉遊びから仮装や祝祭といった遊戯に関わるモチーフが多数埋め込まれていることに加え、1928年に刊行された後、1963年にブルトンによる全面的な改訂を経て再版されている事情に鑑みれば、この作品の分析は、シュルレアリスムにおける遊戯全体の再検討につながると考えられる。そして、シュルレアリスムの起源は自動記述と呼ばれる文学実験にあるが、ブルトンは運動発足当初、自動記述をシュルレアリスム遊戯の一つとして規定していた。自動記述は当時、新奇なイメージを生み出す手法と見られがちであったが、自伝的要素の強い『ナジャ』を自動記述の作品化とする見解は、すでに多くの研究者から提出されている。
本年度は、ブルトンが最晩年に発行した『ラの音』(1961)の分析を通じて、戦後のブルトンが自動記述をどのように捉えていたのかを探った。そして、『ラの音』においては、自動記述の重要な要素である到来する〈声〉の用い方が、1940年代までの用い方と決定的に異なることを明らかにするとともに、1950年代半ばに盛んに興じられていたシュルレアリスム遊戯〈互いのなかに〉が、その転換に作用している可能性を示した。こうした転換の表明が『ナジャ』の改訂直前に行われた点に注目し、今後はさらに戦後のブルトンを掘り下げ、研究を進めていきたい。
本研究成果は、日本フランス語フランス文学会関西支部会における口頭発表を経て、『関西フランス語フランス部文学』第25号に査読付き論文として掲載される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

シュルレアリスムにおける遊戯は大まかに三つに分類することができる。一つ目は、シュルレアリストらによる集団的な遊戯であり、二つ目は展覧会や雑誌の発行など共同的な試みに現れる遊戯性である。そして最後にシュルレアリストによる文学・芸術作品に見出される遊戯というモチーフがある。『ナジャ』の分析自体は三つ目の分類にあたるが、他の二つの領域との関連のなかで論じることが肝要だと考えている。今年度は自動記述と遊戯の関係性についての分析を集中的に行ったため、特に二つ目の展覧会やシュルレアリスム機関誌に関する調査が遅れている。
また、本研究は『ナジャ』読解にあたって、「遊戯」「ドキュメンタリー」「写真」「都市」という四つの軸を設定している。今年度は「遊戯」と「ドキュメンタリー」を中心に進めてきたので、次年度は残りの二つのテーマの比重を増やして研究を仕上げていきたい。

Strategy for Future Research Activity

進捗が遅れている展覧会や機関誌の調査に関しては、電子上で参照可能なものもあるが、そのほかの資料については、フランスにて調査を行う必要がある。特に「写真」というテーマとの関連のなかで、共同で編集・発行された機関誌とブルトン個人の著作における写真の用い方の違いなどに注意しながら分析を行う。
また、「都市」というテーマに関しては、シュルレアリスムの批判的後継者と目されるシチュアシオニストの試みとの比較を行う。シチュアシオニストは、ギー・ドゥボールを中心に1957年に組織され、都市計画批判を先鋭的なかたちで提起した。シチュアシオニストが称揚した「遊び」の概念や、「漂流」(『ナジャ』に描かれる遊歩との親近性が指摘される、合理的に整備された都市空間を自分たちの情動に従って歩き回る)といった試みを中心に扱う。『ナジャ』改訂当時、勢いを持っていたシチュアシオニストとの比較を通して、あまり注目されることのない晩年のブルトンによる社会への問題提起およびそのアクチュアリティの再考を促したい。

Research Products

(2 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 「アンドレ・ブルトンと自動記述:『ラの音』における〈声〉の並置をめぐって」2019

    • Author(s)
      藤野志織
    • Journal Title

      『関西フランス語フランス文学』

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] アンドレ・ブルトンと自動記述2018

    • Author(s)
      藤野志織
    • Organizer
      日本フランス語フランス文学会関西支部

URL: 

Published: 2019-12-27  

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