2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Study on the Expansion Process of the Navy Armament in Taisho Era
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18J13085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小倉 徳彦 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 海軍 / 八八艦隊 / 宣伝 / 政軍関係 / 第一次世界大戦 / 軍事史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本海軍が如何に予算や人材を確保しようとしたのかを明らかにすることで、海軍の組織的特徴、あるいは海軍軍備拡張が政治過程や社会に如何なる影響を与えたのかを解明するものである。 今年度は、国立国会図書館憲政資料室および防衛省防衛研究所などの諸機関に所蔵されている未刊行史料の調査を中心に実施した。また、関連する公刊史料の読解や新聞・雑誌記事の蒐集を行った。以上の調査で得た史料をもとに、採用前の研究成果をさらに進展させ、「八八艦隊」という新語の登場が如何にその後の軍備充実過程に影響を与えたのかを検討し、次の通りの結果を得た。 大正3年のシーメンス事件後に就任した八代六郎海相のもとで、それまで一部の人物しか知るところでなかった建艦目標の公開が行われた。すなわち、明治40年制定の帝国国防方針で定められた戦艦8隻・巡洋戦艦8隻を基幹とする艦隊の建設を、「国民と共に」軍備拡張を進めるために公表したのである。これに対し、海軍外部からは否定的な反応は見られず、むしろ海軍予算の「不足」を指摘する根拠として、各内閣に批判的な勢力から利用されることとなった。一方、第一次世界大戦中の潜水艦の活躍を見た海軍部内では、主力艦を優先するか、潜水艦を中心とする補助艦の充実を優先するかという点で意見が割れることになった。その結果、寺内内閣期の大正7年度予算編成時に補助艦中心の充実案を提出したが、これに対し内閣に好意的だった政友会からも批判の声が上がるような状況が現出し、元来存在しなかった「八六艦隊」なる中途半端な予算案が生み出されることとなった。「八八艦隊」はスローガンとしては有効であったが、海軍の政策選択の自由度を狭めてしまったということが指摘できる。 以上の研究成果は、2018年11月25日に行われた第116回史学会大会日本史部会近現代史部会において、「「八八艦隊」の誕生」という題目で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、史料の蒐集が順調に進展し、海軍が「八八艦隊」をどのように社会へアピールし、それが如何なる影響をもたらしたのかという点に関する成果を得ることができた。一方で、この成果を論文投稿するまでには至っておらず、来年度以降の課題に持ち越されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の対象時期をワシントン会議以降まで広げ、軍縮期の軍備充実過程や、軍縮会議に対する海軍の対応に関する史料の蒐集・検討を行う。その成果は9月に予定されている学会において発表する。また、今年度の研究成果を文章化し、論文投稿を行う。 以上と並行し、これまでの成果を踏まえて博士論文を執筆する。その中で、海軍が如何に予算や人材を獲得しようとしていたのか、軍縮などの海軍軍備に関する問題に関してどのように人々の理解を得ようとしていたのかを探り、海軍軍備充実過程からみた海軍の組織的特徴、あるいは海軍と政治・社会の関係性を明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)