2018 Fiscal Year Annual Research Report
Geometry of cluster modular groups
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18J13304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石橋 典 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | Weyl群のクラスター実現 / 高次写像類群の構造 / 高次Teichmuller空間の対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はクラスターモジュラー群の具体例の研究を目的として、Kac-Moody Lie代数のWeyl群を部分群として持つようなクラスターモジュラー群の系統的な構成を与えた。これはInoue-Lam-Pylyavskyy によりA型およびアフィンA型の場合に与えられていた構成の一般化である。Lie代数が有限型の場合には最長元がクラスターDonaldson-Thomas変換という特別な元を与えることが分かり、クラスター代数の例としても非常に良い性質をもつものであることが分かった。特に今後のクラスター多様体の双対性に関する研究において重要な例となることが期待できる。 またLie代数がアフィン型の場合にはクラスター可積分系と密接な関連が見出せ、特にBershtein-Gavrylenko-Marshakovによる離散Painleve方程式のクラスター実現を再現できることが分かった。今後はこの構成を足掛かりとしてクラスター可積分系に付随するクラスターモジュラー群の研究に取り組む予定である。 さらにこの構成はLie代数が古典有限型の場合、高次写像類群の研究に応用できることが明らかとなった。実際、この構成を用いて曲面の高次Teichmuller A-空間への自然なWeyl群作用がクラスター変換で書けることが明らかになった。つまりWeyl群が高次写像類群の部分群であることが分かり、Goncharov-Shen予想の一部を解決した。 高次Teichmuller空間への応用を得るにあたってその座標関数の表現論的な記述やChamber Ansatz公式の拡張など重要な観察が得られており、これらを応用して高次Teichmuller空間および高次写像類群の幾何学的性質のさらなる解明に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画においてクラスターモジュラー群の具体例の調査は重要な課題であった。当初の計画ではまず有限変異型と呼ばれる比較的扱いが易しい一方、幾何的な背景が明らかでない例の調査に取り掛かる予定であったが、実際にはより表現論的・幾何学的に面白い対象であるWeyl群に関連するクラスターモジュラー群について研究を進めることができた。 さらにクラスターDonaldson-Thomas変換の明示的な構成、クラスター可積分系との密接な関連、さらには別の研究計画として想定していた高次写像類群の研究まで歩を進めることができたのは実に予想を上回る進展であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)クラスター可積分系に付随するクラスターモジュラー群の研究 アフィンWeyl群に対する構成を足掛かりとして、より一般のクラスター可積分系に付随するクラスターモジュラー群の幾何学的性質について調べる。特に対応するダイマー模型の基本変形に対応するような変異列についてその幾何学的な性質を詳しく調べる予定である。 (2)高次Teichmuller空間の構造 高次Teichmuller空間への応用を得るにあたって得られた座標関数の記述やChamber Ansatz公式の拡張などを足掛かりとして、高次Teichmuller空間のさらなる構造解明に取り組む。特にPoisson構造およびその変形量子化に関する研究は引き続きの課題である。
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