2018 Fiscal Year Annual Research Report
同性婚の憲法的保護の論拠とその解釈枠組みに関する比較法的研究
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18J13381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中岡 淳 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 同性婚 / 婚姻の自由 / 尊厳 / 憲法解釈 / 憲法変遷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、本研究課題につき、前期(4月~9月)と後期(10月~翌年3月)の二半期に分けて研究を実施した。 前期においては、本研究課題に関する研究論文が2本、受け入れ所属機関の学会誌に公表された。同論文は、いずれもアメリカにおける同性婚の憲法解釈のあり方について分析したものであり、概ね同国における同性婚に関する判例と学説の議論状況について分析、整理することができた。 後期においては、上記研究課題における比較法研究の力点をアメリカからドイツに移し、同国における同性間のパートナシップ制度や婚姻の自由の議論状況について分析を加えた。ドイツにおいては、2017年に同性婚に関する法案が連邦議会で可決され、当該法律をめぐって学説間で活発な議論が交わされている。後期の段階においては、同法律の憲法上の評価に関して、2017年から2018年3月末までに公表されたドイツ語論文の読解に勤め、概ね、これらの論文が次の二つの論点を中心に議論が交わされていることを明らかにすることができた。すなわち、①憲法上の婚姻の自由が、婚姻当事者の「異性性」(異性であること)を不可欠な構成要素としているか、また、②判例及び通説の間で異性間の関係とされてきた婚姻の自由を、憲法の定める改正の要件を満たすことなく、法律によって同性間に拡張することが、インフォーマルな憲法改正、すなわち、「憲法変遷」に該当し、憲法解釈の枠を超えるのではないか、という論点である。 以上に加えて、後期においては、前期に行ったアメリカ法の研究に関して、関西憲法判例研究会で報告を行った。その際、同研究会に所属の多くの研究者から有益なコメントや示唆を得ることができた。これらのコメントや示唆を踏まえた研究成果は、来年度、既に発表した研究論文の連載の続きとして公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究対象のひとつである、アメリカ憲法における同性婚の議論状況について、平成30年度中に概ね検討を終えることができた。この研究の成果として、所属研究機関の紀要に、論説を2本掲載し、また、関西の主要な憲法の研究会(関西憲法判例研究会)で同論文に関する研究報告を行った。現在は、もうひとつの比較法の研究対象であるドイツにおける同性婚の議論状況について分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究課題の最終年度に当たる。平成30年度中に、同性婚の憲法解釈に関する基礎研究を終えることができたため、今後は、その研究成果を博士論文というかたちでまとめ、来年度中に提出する予定である。特に、平成30年度の研究において、同性婚の憲法上の位置づけに関する議論が、憲法変遷論という憲法学において古くから論じられてきた重要なテーマと関連することが明らかとなったため、将来の研究の発展も見越して、憲法変遷論一般に関する諸外国の論文にも時間の許す限りで取り組む予定である。また、同性婚と憲法変遷論に関する研究の一環として、ドイツにおける最新の議論状況を調査するために、来年度の夏頃に、ドイツにて、同国の研究者と意見交換を行う。
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