2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J13718
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
瑞慶山 広大 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 非強制型国家規制 / 法の表示 / リベラル・デモクラシー / ナッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
ひとつは、非強制型国家規制という論点を提示した論者たちが、特定の国家像や民主政像を有していたことが明らかになり、それに関する先行研究を調査することができた。彼らの構想はいわゆる「リベラル・デモクラシー」と呼ばれる思想に基本的には立脚するものである。彼らは、それに立脚するからこそ非強制型国家規制を利用すべきだとの主張も展開している。つまり、そのような規制態様には、強制のない形で私人の行動をコントロールする害悪性の可能性だけでなく、リベラル・デモクラシーの前提となる社会実践を維持する有用性をも有していると主張しているのである。そして、その有用性を活かしつつも、害悪性を抑制する憲法理論の構築を目指していたのである。また、その憲法理論の構築に際し、「法の表示」と呼ばれる概念が有用であることをも主張していた。この点については、しかし、先行研究の渉猟と分析に想像以上に時間を取られ、論文の公表に至らなかった。彼らの議論を詳細に紹介し、それが現在の憲法理論に与える影響について考察する論文を早急に公表したいと考えている。 もうひとつは、現代的問題と本研究との繋がりを示す2つの成果を発表したことである。当該年度においては、(1)非強制的な国家規制と近年その社会的存在感を増す人工知能(AI)の法的統制との関連を指摘する論攷と、(2)ナッジと呼ばれる非強制的な私人行動統制メカニズムを積極的に支持する論者の近著への書評を著した。これらにおいて、現代の技術や社会問題に関しても、本研究が示唆を有することが明らかになったと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本課題で取り扱う研究内容を論文等の形で公表することが叶わなかった。これは、非強制的国家規制に関する先行研究が、研究計画提出時の想定よりも質・量ともに膨大で、その収集及び分析に多くの時間を割く必要に迫られたからである。それ故に、それらを取りまとめ、法学理論上の意義や現実の法的実践に対する示唆を伴う形で論文化することができなかった。この意味で、研究計画に遅れが生じているとの指摘に対しては甘受せざるをえないと考えている。 ただ、先行研究の収集と分析には時間を掛けることができ、一定の成果も経ている。次年度については、これらの成果を論文等の形で積極的に公表していく予定である。また、この収集・分析によって、2年目の研究計画に影響を与える主張を発見することもできた。これらも当初の計画通り2年目の成果として、論文等での発表を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究成果の第1に掲げた研究については、論者の議論を詳細に紹介し、それが現在の憲法理論に与える影響について考察する論文を早急に公表したいと考えている。論文を2019年度前半に投稿し、2019年中に刊行されるようなスケジュールを念頭に、執筆を進める。その後は、2年目の研究計画に基本的に基づく形で、1年目の成果との接続を意識しつつ、非強制型国家規制の憲法統制論の確立に努める。
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Book] AIと憲法2018
Author(s)
山本 龍彦
Total Pages
480
Publisher
日本経済新聞出版社
ISBN
4532134854