2018 Fiscal Year Annual Research Report
中世連歌における文学的教育・学習の様相ー注釈の総合的研究
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18J14018
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
浅井 美峰 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 連歌 / 古注釈 / 連歌師 / 宗牧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、連歌の注釈の中から連歌師宗牧の作品と注釈を中心に研究し、その成果を二つの学会で発表した。 連歌師宗牧の注釈については、まず「連歌古注釈の叙述法―宗牧注を中心に―」として口頭発表を行った。この発表では、連歌の注釈がどのように叙述され、それがどのように継承されていくかということを、具体的な注釈の記述から検証し、連歌の注釈が講釈等と密接な関わりを持つことを示した。次に、天文年間の連歌師宗牧の注釈について、「連歌作品と古注釈の成立について―天文年間の宗牧注を起点として―」という題で口頭発表を行った。連歌においては、旅の中という特殊な環境でも新たな作品が作られ、それに並行して講釈や注釈の執筆も行われているということを、宗牧の紀行『東国紀行』の記述と、現在に残るその旅の中で成立した作品・注釈によって示した。 本年度「連歌古注釈と付合学習―「一句」に注目させるということ―」という題で『中世文学』63号に掲載された論文は、前年(2017年)の中世文学会秋季大会での口頭発表に基づいたものである。連歌の基本的な最小単位である連続する二つの連歌句ではなく、さらにその中の一句のみに注目させる、という特殊な注釈の書き方を指摘し、そこから連歌の注釈が、読者(連歌学習者)自身が句を詠めるようになることを目的として、実践的な書き方がされているということを明らかにした。この連歌特有の注の書き方は、上記の口頭発表の内容にも繋がる部分があり、通時的な注釈の方法の変遷などを今後さらに整理してまとめたいと考えている。 また、安田女子大学に赴き、連歌師紹巴の千句の注釈をはじめとする連歌資料の調査を行った。その結果の精査・検討も来年度引き続き行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の対象に翻刻のない作品も含まれるため、その資料調査・整理を中心に本年度は研究を進めていった。計画の段階では存在を確認できていなかった伝本の調査も行うことができたため、来年度の研究に繋げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の口頭発表・資料調査結果をまとめ、論文化していく。また、未見の連歌注釈の伝本については資料調査・収集を継続していく。本年度は連歌師宗牧の連歌古注釈を中心に研究を進めたが、次年度は他の連歌師・他の作品の注釈にも目を向け、分析を深めていきたい。
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Research Products
(4 results)