2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J14078
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
東井 千春 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 身体的自己意識 / 自己感 / 身体錯覚実験 / ベイズ推定 / 多感覚統合 / バーチャルリアリティ / 全身錯覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体による自己の意識=身体的自己意識(Bodily Self-Consciousness: BSC)がどのように生起されるのかについて、偽の身体に対して自己感を生じさせる身体錯覚実験を用いて、検討を行ったものである。身体錯覚実験を用いた、これまでの研究より、BSCは3つの要素:(1)多感覚統合、(2)見た目の整合性、(3)一人称視点、によって構成されていることが明らかになったが、その生起メカニズムや3要素の関係性を示すモデルは、未だ明らかになっていなかった。そこで、本研究では、ベイズ推定を用いたシミュレーション実験と、その結果に基づいた実証実験を行うことにより、BSCを構成する3要素と、その相互作用について、モデルを構築することを目的に、実験を行うこととした。 当該年度は、まず、全身錯覚におけるモデル化の流れを定式化するため、基礎となる部分のモデル化を重点的に行った。本研究では、ラバーハンド錯覚(Rubber Hand Illusion: RHI)において行われたモデル化の流れを踏襲して、検証を行うこととした。具体的には、まず、感覚因果推論の考え方を用いて、ベイズ推定によるシミュレーション実験を行い、シミュレーション結果から、BSCを構成する各要素の関係性を示す変数を得た。次に、その結果から導き出された条件を用いて、シミュレーションに基づいた実証実験として、全身錯覚実験を行った。当該年度は、基礎となる部分のモデル化を行うために、これまで行ってきた実験の結果を用いて、シミュレーション実験と、シミュレーション結果に基づく実証実験による検証を行った。この結果より、BSCの中でも特に、(1)多感覚統合とBSCの関係性を示すモデルを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、まず、これまで行ってきた、VR(バーチャルリアリティ)-ヘッドマウントディスプレイを用いた全身錯覚実験より、BSCの各要素についての実験結果をまとめ、個々の要素について総括した。この総括によって、ベイズ推定によるBSCのモデル化を行うための素地を整えることができたと言える。また、これらの結果を用いて、上記のようなシミュレーションと実証実験による検証を行ったため、当該年度は、最も基礎となる部分のモデル化を実施することができた。機器等の都合により、当初予定していた、(3)一人称視点とBSCの関係性を示すモデルの構築までは行うことはできなかったものの、今後、他の要素も含めた、BSC自体のモデルを構築するために必要な、モデル化の手法を確立できたという点では、大きく進展したと言える。以上の状況から、研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度に行うことができなかった、(3)一人称視点とBSCの関係性を示すモデルの構築を完了させ、新たに、(2)見た目の整合性とBSCの関係性を示すモデルの構築を行うことで、BSCを構成する、残りの2要素それぞれに関するモデルを得ることを目的に、実験検証を行う予定である。適宜、機材やソフト等を追加導入し、これらの要素に関して実験検証を行う。上記のモデル化がすべて完了すれば、3要素とBSCの関係性を示すモデルをすべて得ることができるため、これらを総括することで、BSC自体のモデルが構築できると考えられる。したがって、次年度は、BSC自体をモデル化することを目的に、引き続き実験検証を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)