2018 Fiscal Year Annual Research Report
光触媒作用を活用した窒素酸化物の浄化における窒素選択性制御因子の解明
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18J14101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉井 和樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 光脱硝 / 光触媒 / HC-SCR / 酸化チタン / 環境触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,TiO2の光触媒作用を活用した窒素酸化物(NOx)の低温での還元浄化を目的としている.特に,窒素選択性制御因子の解明に注目して,これまでに以下の内容の研究を実施した. 1.光触媒反応装置の設計と評価系の確立 酸化チタン(TiO2)を触媒とした,流通系での炭化水素によるNOx光還元反応では,WakerやWuらのグループによる報告があるが,その反応機構の詳細に関してはほとんどわかっていない.また,触媒活性をNOxの転化率のみで評価している例が大部分であり,還元生成物として生成するN2とN2Oの選択性について経時的な分析を行った例はこれまでにない.これらの先行研究を踏まえ,光触媒作用よる触媒上でのN2生成機構を明らかにするために,反応基質および生成物を短い時間スケールで経時的に分析する反応系ならびに分析系を確立した.石英窓付きヒーターと石英製の反応管を設計し,光照射条件下において安定してた条件での反応を実現した.また,micro-GCやNOxメーターなどの検出器を組み合わせ生成物の分析を高い精度で実現した. 2.種々のTiO2を用いたC3H6を還元剤としたNOx還元活性の評価 上記の反応系と分析計を確立したうえで,種々のTiO2光触媒を用いてC3H6を還元剤としたNOx光還元を行った.TiO2の比表面積,結晶子径,結晶相等の物性をもとにN2およびN2Oの生成速度,およびC3H6の酸化活性に対する影響を検討した.特に,比表面積と結晶相が重要であり,アナターゼ型TiO2ではルチル型に比べてN2生成速度と選択性が優れていることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,N2やN2Oなどの生成物を短い時間スケールで分析する手法の確立が要点である.これまでの先行研究では,生成物の分析が不十分であり,N2OとN2を短い時間スケールで分析した報告例はない.N2生成の選択制制御因子の解明にはN2の分析は不可欠である.我々は,これまでに三元触媒の研究で培った生成物の分析技術を活かして,micro-GCを用いて酸素が過剰に含まれる条件下で,微量に生成するN2を定量することに成功した.また,NOxメータなどのほかの分析装置と組み合わせることで,反応物および生成物の分析系を確立した.これによって,これまでに十分に検討されてこなかった,酸化チタンの物性がNOxの光還元時のN2選択性におよぼす影響について新たな知見を得ることができた.本年度において反応系と評価系を確立できたことは,本研究において占めるところが大きく,この先の研究に大いに帰するものであると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から,酸化チタンの結晶相によりNOx光還元活性ならびにN2選択性に違いが現れ,特にアナターゼ型酸化チタンにおいて、N2が顕著に生成することを明らかにした.赤外分光法からC3H6の触媒表面での活性化において,結晶相が大きな影響を及ぼしていることをつかんでいる.そこで,今後の研究の方針としてはさらに詳細な反応メカニズム.つまり,N2の生成機構に関して反応速度論解析や,赤外分光法と生成物の経時変化を比較することで検討する.また,C3H6の活性化が重要な因子であることはすでに明らかにしているので,例えばNbやWなどの異種元素を修飾することでTiO2上に新たなルイス酸点を創出し,C3H6の活性化の促進とNOx光還元活性の向上を試みる.同時に,違いが表れた触媒に関して赤外分光法により反応機構へとフィードバックして,最終的には明らかにした反応メカニズムからの合理的な触媒設計につなげたい.
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Research Products
(2 results)