2018 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体の可変大容量キャパシタを利用したエレクトレット振動発電素子の開発
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18J14159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 智華子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | エレクトレット / 低消費電力 / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、ポリマー中に分散したイオン液体の電気二重層エレクトレットの基本特性を測定した結果をまとめ、発電原理の解明に取り組んだ。ポリマーに対するイオン液体の比率や負荷抵抗の値、振動の周波数などを変化させて、電極と接した際の出力電流・電圧を計測した。分極電圧やイオン液体の有無を変えた対照実験から、イオン液体を加え、さらに界面に電気二重層を形成することが、出力増大に寄与していることを確認した。2つの異なる物体が接触した際に、一方が正極性に、他方が負極性に帯電する、摩擦帯電の効果が働いていると考えた。 一方でシリコン酸化膜エレクトレットに関しては、MEMS静電アクチュエータ応用の形に発展させてデバイスの設計・作製・評価を行った。センサやアクチュエータの駆動用のDC電圧の代わりに、エレクトレット材料が形成する電位差を利用することで、外部電源からの電力消費を低減する。環境発電素子で生み出した電力を利用する側のセンサやアクチュエータを低消費電力化することで、発電量が少なくてもデバイスを利用できるようになるため、自立電源を備えた無線センサノードが実現する。エレクトレットをあらゆる種類のセンサやアクチュエータに応用できるようにすべく、デバイス作製に基づいて理論を確立するのが目的である。具体的には、静電アクチュエータの一例として、振動膜を有しスピーカー等に応用可能なデバイスを作製してきた。SOIウエハから作製したシリコンデバイスにエレクトレットチップを積み重ねると変位-電圧特性や周波数特性が変化したため、エレクトレットが振動膜との間に電位差を形成することが確認できた。次に、デバイスの一部をエレクトレット膜で構成することでチップの組み立ての工程を不要とすべく、SOIウエハのBOX層を介したエレクトレット膜の帯電手法の確立に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体を利用した電気二重層エレクトレットに関しては、材料や測定セットアップを改めて見直し、取得した基本特性から発電原理を多角的に考察し議論を深めることができた。 シリコン酸化膜エレクトレットに関しては、当初の計画を変更して環境発電素子を利用するMEMS静電アクチュエータ側への応用を行ったものの、振動膜を有するデバイスの作製手順や測定セットアップ等の確立を順調に行うことができた。 以上より、総じて概ね順調に進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体を利用した電気二重層エレクトレットに関しては、電極と接触した際に界面で起きている現象を明らかにすべく、表面電位顕微鏡等を用いた電流測定に取り組む予定である。金属プローブをエレクトレットに押し込む力と出力電力との関係を求めることで、発電時のエネルギー収支を解明する。 シリコン酸化膜エレクトレットに関しては、MEMS静電アクチュエータ応用の形に発展させたデバイスの設計・作製・評価に引き続き取り組む。今年度はSOIウエハのBOX層を介したエレクトレットの帯電手法の確立に主に取り組んだことから、次年度はデバイスの作製と評価をさらに進め、機械的・電気的特性に加えて音響特性も取得する予定である。
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Research Products
(3 results)