2018 Fiscal Year Annual Research Report
多能性幹細胞を用いた赤血球輸血製剤の大量安定供給システムの構築
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18J14237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杠 明憲 京都大学, 京都大学大学院 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 赤血球分化 / 大量培養 / バイオリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
多能性幹細胞を用いて、輸血用赤血球を工業的に大量産生し、安定供給を目指すことを目的とした研究である。以下の4項目に分けて実験を行なっている. [1. ヒト多能性幹細胞からヒト造血前駆細胞への分化誘導].多能性幹細胞からヒト造血前駆細胞への新規の分化誘導方法を開発した.本方法を用いて得られた造血前駆細胞をさらに成人型赤血球へ分化成熟させるべく検討を行った.ヒト栄養欠乏性貧血で認められるサインにヒントを得て、現在の培地組成に不足している栄養素を補い赤血球産生量を増加させることで欠乏因子の重要性を証明した(論文準備中).次に、様々な多能性幹細胞の株間で造血前駆細胞の誘導効率が大きく異なる問題に対して、培養条件による外部環境因子の影響を新たに発見し、特許申請ならびに2018年米国血液学会での発表へと繋げた. [2.不死化赤血球株のプロファイリング].不死化赤血球株を用いて、成人赤血球に特徴的な“脱核”と“グロビンスイッチの完遂”を目的に検討を行った.不死化赤血球株の分化成熟相における明視野MG染色によって観察し、分化成熟の最適化に成功したが、依然、成人型赤血球の条件である脱核・グロビンスイッチは完遂していない. [3.臍帯血由来培養赤血球と多能性幹細胞由来分化培養赤血球の比較].臍帯血由来赤芽球と不死化赤血球株,多能性幹細胞からの分化赤芽球で近しい細胞表面抗原が現れることを確認した.これらを採取し,トランスクリプトーム解析で厳密に比較,臍帯血由来培養赤血球を模倣するためにどのような因子が必要かを解析する. [4.不死化赤血球株の新規バイオリアクターへの適用・応用].不死化赤血球株へバイオリアクターを適用することで脱核やグロビンの変化が起きるかを検討したが,血小板製造のための最適化条件では不死化赤血球はほぼ死滅し維持培養ができないことが明らかになった.今後さらなる条件設定の検討を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本実験全体の重要な基礎部分である「ヒト多能性幹細胞からヒト造血前駆細胞への分化誘導法の確立」において新たな発見があり,その解明に予想よりも多くの時間を費やすことが必要だったため全体に遅れが出ているものと考える.具体的には多能性幹細胞の培養条件を整えることによって株間で不均一であった造血前駆細胞の分化誘導効率をコントロールできるという,派生的ではあるが従来の再生医療における一つの問題点を解決するかもしれない重要な発見であった.これについては結果をまとめ鋭意論文執筆中であり,今後は赤血球分化および解析の実験を再開していく.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,多能性幹細胞を用いた赤血球輸血製剤の大量安定供給システムの構築を目的に計画を立て,実験を行う. [1. ヒト多能性幹細胞からヒト造血前駆細胞への分化誘導].本実験開始前で新規に開発した造血前駆細胞の誘導法は従来の分化方法の約100倍の効率で分化生成が可能であった.これに現在はさらに改良を加え,従来法の170倍前後まで効率をあげることに成功している.この方法によって得られた造血前駆細胞を細胞表面抗原を用いて既報の分類方法で分類し赤血球前駆細胞を抽出し,プロファイリングと成人型赤血球への分化方法の検討を行う. [2.不死化赤血球株のプロファイリング].これまでの検証で,不死化赤血球株は赤血球分化過程の最終分化過程をよく模倣するものであると考えられる.このため,既報および自実験の結果を踏まえ,赤血球最終分化に重要とされる因子を加える実験を試みる. [3.臍帯血由来培養赤血球と多能性幹細胞由来分化培養赤血球の比較].トランスクリプトーム解析を行い,臍帯血由来培養赤血球を模倣するための因子を解析する. [4.不死化赤血球株の新規バイオリアクターへの適用・応用].バイオリアクター条件の最適化を進める.具体的には,不死化赤血球株が死滅した原因が環境からのメカノストレスによるものなのか,酸素環境などの化学的な変化によるものなのかなどを一つずつ検証していく.
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Research Products
(2 results)