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2018 Fiscal Year Annual Research Report

森林生態系における微生物間相互作用が土壌有機物の分解速度に及ぼす影響の解明

Research Project

Project/Area Number 18J14438
Research InstitutionThe University of Tokyo
Research Fellow 執行 宣彦  東京大学, 東京大学大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywords土壌微生物 / 外生菌根菌 / 腐生菌 / 微生物間相互作用 / 遺伝子から生態系まで / 炭素循環 / Gadgil効果 / リター分解
Outline of Annual Research Achievements

近年、二酸化炭素濃度の上昇に伴う気候変動の懸念により、炭素プールとして森林土壌が重要であることが指摘されている。その中で、土壌微生物群集間の相互作用による有機物分解の抑制が、炭素循環の主要な調整機構として注目を集めている。研究代表者は、ある生物の遺伝子の機能が、群集や生態系にまで影響するという「遺伝子から生態系まで」の考え方(Genes-to-ecosystem concept)に基づき、野外と室内の実験により、森林生態系の外生菌根菌-腐生菌間の相互作用による土壌有機物の分解速度の抑制機構を解明することを目的とした。
平成30年度は、研究計画時点の内容を一部変更し、土壌微生物群集の時空間変動性を明らかにする研究を行った。具体的には、調査地である東京大学秩父演習林の土壌微生物群集の標高変化と季節変化を明らかにした。土壌微生物の多様性と標高や季節との関係に関するこれまでの研究は、共に変化する様々な環境要因については十分に考慮されてこなかった。土壌微生物群集の標高変化については、気候・植物の形質・土壌が、標高に沿った土壌微生物の多様性にどのような影響を及ぼしているかを構造方程式モデルにより明らかにした。細菌群集を対象とした結果では、多様性と標高の負の関係性が、年平均気温を介した樹木の葉の形質多様性と土壌特性の変化によって説明されることが明らかとなった。この研究の結果は、研究代表者が筆頭著者かつ責任著者となって、FEMS Microbiology Ecology誌に掲載された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究計画時点では、平成30年度は、樹木を中心に一周する溝を掘り、土壌微生物群集の変化を明らかにする野外実験を計画していた。しかしながら、土壌微生物群集間の相互作用を明らかにするには、土壌微生物群集がそもそも環境の変化とともにどのように変化するのかが分かっていないという問題点が、研究開始後に明らかになった。実際、次世代シーケンサーを用いた森林の土壌微生物群集の分布に関する研究は近年増えてはいるが、時空間変動性については十分な理解は得られていない。特に、植物が微生物を介して土壌へ及ぼす影響を明らかにするには、時空間的な環境変化の中での、樹木の形質と土壌微生物群集の関係を明らかにする必要があった。この点を明らかにすることは、トレンチ処理後の微生物群集の変化が、処理の効果なのか、季節や場所の効果なのかを分離して理解するために必要な研究であると考えられた。さまざまな立地条件の森林で網羅的かつ通年の調査を行った結果、土壌微生物叢の空間分布が、気候条件や土壌特性だけでなく、樹木の形質多様性によって説明されることを明らかにして、その成果を国際学術誌に発表した。また、土壌微生物叢の季節変動が、土壌特性の季節変化や樹木のフェノロジーから影響を受けることを明らかにして、その成果を国際学術誌に投稿中である。これらの成果は、研究の主要なステップである野外実験を成功させるために、その前提条件を理解するという取り組みによって達成されたものであり、研究実施状況はおおむね順調に進展していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

今年度は、野外実験と室内実験を並行して行う予定である。野外実験とリターバッグの埋設期間は、当初の研究計画よりも短縮して行うが、研究代表者の過去の研究から、半年の実験期間でも十分な分解率と微生物群集の変化の結果が得られることが考えられる。野外実験は5~7月にコメツガ成木5個体を選び、その周囲半径2 mでトレンチ処理を行う予定である。室内実験については、今年度の室内実験の準備として、既に調査地内でコメツガの種子を採取し、表面殺菌を行っている。また、マツタケ(Tricholoma matsutake)菌糸体NBRC30605株に加え、アンズタケ(Cantharellus anzutake)の菌糸体NBRC113265株も本研究で使用可能であることが新たに明らかになっており、コメツガの菌根菌としても適していると考えられたため、接種試験に用いる予定である。これらの菌株をオオムギに接種させた種菌を使用し、発芽した種子の主根に接種することで計10個体のマツタケを外生菌根菌にもつコメツガ実生を作成する予定である。接種5ヶ月後に5個体は暗条件で生育させ、接種9ヶ月後にコメツガ実生を取り出す。これらの菌根菌についてRNA-seq法でのトランスクリプトーム解析を行い、暗条件と無処理との間に転写産物やその発現量に変化があるかどうか比較する予定である。最終的に平成30年度の野外観察の成果と、今年度の野外実験と室内実験の結果をまとめ、森林生態系における微生物間相互作用が土壌有機物の分解速度に及ぼす影響を明らかにする予定である。

Research Products

(5 results)

All 2019 2018

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Plant functional diversity and soil properties control elevational diversity gradients of soil bacteria2019

    • Author(s)
      Shigyo Nobuhiko、Umeki Kiyoshi、Hirao Toshihide
    • Journal Title

      FEMS Microbiology Ecology

      Volume: 95 Pages: -

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/femsec/fiz025

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Inter- and Intraspecific Patterns in Resprouting of Trees in Undisturbed Natural Forests along an Elevational Gradient in Central Japan2018

    • Author(s)
      Umeki Kiyoshi、Kawasaki Mitsuru、Shigyo Nobuhiko、Hirao Toshihide
    • Journal Title

      Forests

      Volume: 9 Pages: 672~672

    • DOI

      https://doi.org/10.3390/f9110672

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 環境微生物系合同大会2017ポスター賞受賞者の声2018

    • Author(s)
      海老原 諒子、鈴木 研志、田上 諒、中島 悠、鈴木 重勝、平井 美穂、大竹 遥、佐野 友紀、中小路 菫、安田 まり奈、石井 拳人、後藤 栞、渡辺 宏紀、執行 宣彦
    • Journal Title

      日本微生物生態学会誌

      Volume: 33 Pages: 2~8

    • DOI

      https://doi.org/10.20709/jsmeja.33.1_2

    • Open Access
  • [Presentation] 落葉分解に対する微生物群集の固有性2019

    • Author(s)
      執行宣彦・梅木清・平尾聡秀
    • Organizer
      第130回日本森林学会
  • [Presentation] 奥秩父山地の非撹乱森林における樹木萌芽生産の種間・種内のパターン2019

    • Author(s)
      梅木清・川崎満・執行宣彦・平尾聡秀
    • Organizer
      第130回日本森林学会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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