2018 Fiscal Year Annual Research Report
流砂量計測に基づく排砂バイパストンネルの設計高度化に関する研究
Project/Area Number |
18J14626
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小柴 孝太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 排砂バイパストンネル / 流砂計測 / インパクトプレート / 堆砂 / 貯水池 / 掃流砂 / 信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)インパクトプレート(IP)を用いた小渋ダムSBTにおける流砂観測手法の実運用データへの適用 平成29年度に,水路実験及び現地実験に基づき,IPの出力から流下土砂の粒径及び体積を推定する手法を提案した。本年度は小渋ダムSBTの運用データに適用し,ダム管理者との情報共有を行った。未だ粒径分布や土砂量を高精度で求めるには至っていないものの,粒度分布やバイパス土砂量の相対的な時系列変化,空間分布はよく把握できることがわかった。SBT内土砂動態の時空間的な変動を確認することは従来の事後的な観測ではなされることがなく,ダム管理者からも効率よくSBT運用を行う上で有用であると評価された。 (2)信号処理技術を利用したIPによる土砂動態推定精度の向上 上記にあるように,IPによる観測データに基づく流下土砂の流径,体積の定量化については精度的な課題が残る。より高精度のモデル構築のため,観測生波形の信号処理技術を駆使した解析が必要である。一般的に信号処理のフローは生波形のノイズ除去(クリーニング),特徴量抽出,統計的解析である。平成30年度はノイズ除去として従来使用されてきたフーリエ変換に基づくフィルタリングではなく,より非周期的,突発的変化にロバストなウェーブレット変換を採用し,大きな効果を確認した。 (3)TELEMAC-2D(数値計算コード)を用いたSBT内土砂移動動態の再現 フランス電力(Paris, France)に平成30年9月-12月の三ヶ月間滞在し,TELEMAC-2D及び土砂移動計算モジュールであるSISYPHEを用いた小渋ダムSBT内土砂移動動態の再現計算を行った。トンネルカーブによる二次流を想定しない場合は良い精度で再現できるが,二次流の影響を考慮した場合は二次流が過小に再現され土砂の空間分布の偏りも均されてしまう結果となり,現在はこの問題の解決を図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が取り組んでいる課題は,排砂バイパストンネル(SBT)という土砂を含む流れが高速で流下する環境での土砂動態モニタリングであり,SBTの管理,運用,設計上重要にも関わらず従来十分に行われてこなかった。申請者は,インパクトプレート(IP)と呼ばれる間接的土砂計測装置を用いて上記課題に取り組んでおり,水路実験や現地実験に基づくデータ解析結果を用いて小渋ダムSBTの実運用における土砂の時空間的な移動動態を明らかにした。SBT運用中の時空間的土砂移動を明らかにするのは初の試みであり,その有用性からダム管理事務所からのニーズも高い。さらに,申請者ノイズ除去に関わる信号処理技術やよりロバストな統計的回帰手法を使用し,より精度の高いデータ駆動のモデリングを行っている。この試みは,砂防分野における間接的流砂観測の分野においても新しいアプローチだといえる。 また,申請者は小渋ダムSBTで得られた知見を,SBTの設計高度化に繋げることを目的として,SBT内土砂移動の数値シミュレーションを行っている。このため,平成30年度はフランス電力に三ヶ月間滞在し,数値計算の学習を集中的に行うとともに,SBT内土砂移動のシミュレーションを行った。 以上より,研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
小渋ダムSBTは運用4年目に入り、トンネル底面摩耗量の実測値が蓄積されている。しかしながら,実運用の流砂量計測に関しては検証用となる流砂量データがないため,十分にインパクトプレートによる流砂量の推定精度を上げる必要がある。本年度前半は,土木研究所など他機関において行われたインパクトプレートに関する実験データを合わせてより流砂量推定式の精度向上を測る。具体的には,従来の流砂力学に基づくアプローチではなく,信号処理を駆使しデータ駆動のアプローチを取る。当アプローチでは,信号のノイズ除去と解析の段階を経るが,ノイズ除去については前年度に行いRIverFlow2018で発表,投稿済みである。 本年度後半は,インパクトプレートによる掃流砂量の実測結果と摩耗量の実測値を用いて、既往の摩耗量予測式(石橋式)の修正を行うことで、空間的磨耗分布再現モデルの調整を行う。蓄積された複数の洪水イベントにおいて推定された土砂流下量と掃流力が引き起こす推定摩耗量を示し、実績値との整合を行う。さらに、摩耗分布に影響するパラメータ(SBT の曲率、勾配、縦横比など)を明示し、トンネルの維持管理を最適化させる条件を導く。
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Research Products
(4 results)