2018 Fiscal Year Annual Research Report
On the relationship between sentence-level syntactic properties of utterances and the accompanying gestures
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18J14784
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡久 太郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ジェスチャー / 韻律 / 統語構造 / 統語的曖昧性 / パラ言語的情報 / 第二言語学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に、(1) 研究課題に関する理論的議論、(2) そこでの理論的考察についての妥当性の検証、(3)統語的曖昧文を用いた発話実験の実施を行った。 (1)については、先行研究を参照しつつ、本研究の理論的基盤を構築した。結論として、これまでは言語外的要素として考えられてきたジェスチャーのような文脈的要素も一体として、言語を捉える必要があると主張した。これは、既存の言語学的研究では明らかにできていなかったパラ言語的情報と言語表現との関係性を探究する前提として不可欠な理論的議論となった。 (2) については、多様な解釈が可能となる文の解釈において、我々が構文的知識を用いていると仮定し、これを検証する調査を行った。その結果、ある表現に対して、同じような意味を想起していても、学習者によって、その意味理解の手がかりとして用いている構文は異なる可能性があることが確認された。これは、特定の表現が固定的な意味を有し、その累積として文の意味が算出されるという古典的な言語観で説明することが難しく、 (1) の研究において想定した構文的言語観によってこそ説明できると考えられる。これにより、(1) で導出した結論が事実を説明する上で有意義なものであることが示された。 (3) については、発話の統語構造を表すジャスチャーは統語構造に応じた韻律に影響を与えるものであること、また単語記憶や上肢運動のような単純な認知的 負荷とは異なるものであることが示唆された。これは、韻律やジェスチャーが発話の統語構造という言語的特性と密接に結びついていることを意味しており、これまでの言語学研究の対象が限定されすぎていたことを示すという意味で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に挙げた (1) ~ (3) について順に詳細な進捗状況を示す。 (1) については、関連性理論や認知言語学における先行研究を参照しつつ、本研究の理論的基盤を構築することに努めた。結論として、John R. Taylor や Ronald W. Langackerが提唱する言語観に立脚しつつも、これまでは言語外的要素として考えられてきたジェスチャーのような文脈的要素も一体として、言語を捉える必要があると主張した。 (2) については、上述の理論的考察により、本研究で対象としているジェスチャーは個別の事象としてではなく、言語表現と一体であるとみなす構文 (construction) 的言語観を取る必要性が生じた。そのため、クラウドソーシングを用い、英語母語話者が聞き馴染みのない文でありながら、その意味を想像することできるもの (e.g., He cut the family.) を収集し、それらの文の意味を英語を第二言語として学習する日本人大学生に答えさせ、その結果を記述的に分析した。 (3) については、統語構造についての韻律的区別に対するジェスチャーの影響を検討するために、(a) 音読のみで統語的区別を行う条件、(b) ジェスチャーを伴った発話で統語的区別を行う条件、(c) 単語を記憶しながら統語的区別を音読によって行う条件、(d) 無意味な手の動きを伴いながら統語的区別を音読によって行う条件の4つの条件下で、東京方言話者に各統語的曖昧文の音読実験を行わせた。また、そこで得られたデータを用いて、香港教育大学の任演納助教授と共同研究という形で、日本語を第二言語として学ぶ香港在住の広東語母語話者に対し、発話の理解実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に挙げた (1) ~ (3) について順に推進方策を示す。 (1) については、これまでの研究成果から、どのような文脈的要素までを言語的単位として認定すべきかを検討する必要が生じた。この点については、言語哲学の分野においても様々な議論がなされているため、これらの言語哲学的研究を踏まえつつ、さらなる理論的議論を行っていくことを予定している。 (2) において得られた結果は、あくまで第二言語学習者からのものであるため、第2年度は、英語母語話者に同様の調査を実施し、母語話者においても同様の特徴が観察されるのか、また、第二言語学習者における母語の影響があったのかを検討していくことを予定している。 (3) については、理解実験を日本語母語話者にも実施し、今回得られた第二言語話者とのデータと比較検討し、母語話者と第二言語学習者の差異を明らかにしていくことを予定している。
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Research Products
(2 results)