2018 Fiscal Year Annual Research Report
高度不飽和脂肪酸(PUFA)を含むリン脂質の細胞機能解明
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18J14999
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 友理 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 高度不飽和脂肪酸 / リン脂質 / アクチン骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度不飽和脂肪酸(PUFA)は二重結合を複数持つ脂肪酸である。その多くは生体膜を構成する脂質、リン脂質に含まれる脂肪酸鎖として存在している。これまでに私は、リン脂質中のPUFAを欠損する哺乳動物培養細胞(PUFA欠損細胞)を作製した。更にこの細胞で、細胞膜直下のアクチン骨格脱重合に起因する細胞膜ブレブが形成されること、PUFAを含むPI(4,5)P2(リン脂質の一種)の添加でブレブが消失することを見出している。そこで私は、PI(4,5)P2のPUFA鎖を認識するタンパク質がアクチン骨格制御に関与すると仮定しそのタンパク質の同定を目指した。具体的には、[1]PI(4,5)P2の近傍タンパク質をスクリーニング、その中からPUFAの有無によって細胞膜局在が変化するものを同定した。[2]既知のPI(4,5)P2結合タンパク質の中に、PUFA鎖に感受性のあるものがないかを検討した。 以上のアプローチから絞り込んだ候補タンパク質について、PUFA欠損細胞を用いて解析した。同時にタンパク質を精製し、PI(4,5)P2が持つPUFA鎖の有無でPI(4,5)P2への結合能が変化するか実験を進めた。その結果、細胞の接着に関与する接着班の形成タンパク質でありアクチン重合能を制御するあるタンパク質Xの機能にPUFA含有PI(4,5)P2が必要不可欠である事が強く示唆されるデータが得られた。現在、NMRなどの手法も用いて、このタンパク質XのPUFA鎖に感受性を有する構造学的特徴も明らかにすることを検討しており、解析を進めている。 本研究は、PUFA含有リン脂質の存在意義、およびその機能を分子レベルで明らかにした世界で初めての研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究で私は、培養条件の検討により、リン脂質中のPUFAを欠損する哺乳動物培養細胞を作製した。更にこの細胞で、リン脂質の一種PI(4,5)P2に含まれるPUFAの欠損で細胞膜直下のアクチン骨格脱重合に起因する細胞膜ブレブが形成されることを見出した。 本年度の研究において私は、PI(4,5)P2のPUFA鎖を認識してアクチン骨格制御に関与するタンパク質が、PUFA欠損細胞でその機能を損なうことで細胞膜ブレブが発生すると仮定し、そのタンパク質の同定を目指した。まず、私はアクチン重合に関与する分子をスクリーニングした。その結果、細胞接着斑構成蛋白質の一種であり、PI(4,5)P2 を認識することが知られている分子であるタンパク質Xのノックダウンによって細胞膜ブレブが発生することを見出した。そこでin vitroでさらなる解析を行い、タンパク質XのリコンビナントがPUFA含有PI(4,5)P2に好んで結合することを明らかにした。以上のことからPUFA含有PI(4,5)P2がタンパク質Xの機能に必要不可欠である事が強く示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NMRによる解析を引き続き行なっていくと同時に、PI(4.5)P2中のPUFA特異的に相互作用すると考えられるアミノ酸残基を変異させたタンパク質XがPUFA欠損細胞の細胞膜ブレブ形成を抑制できるか検証する。並行して、アミノ酸残基を変異させたタンパク質XリコンビナントのPI(4,5)P2への結合能がPUFA特異的に変化するかin vitroでの解析(liposome共沈降実験)を行う。 また、今までのデータをより詳細に取ると同時に、PUFA含有PI(4,5)P2欠損による細胞接着への影響も精査する。
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Research Products
(2 results)