2018 Fiscal Year Annual Research Report
概日時計を介した適応戦略の解析:UV耐性とエネルギー代謝のトレードオフ仮説
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18J15016
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川崎 洸司 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 概日時計 / 紫外線耐性 / エネルギー代謝 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞性シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942は概日時計を持つ最も単純なモデル生物として知られている。私たちは概日紫外線(UV)耐性リズムの存在を原核生物としては初めて実験的に実証し、幅広い生物種で保存された共通の適応戦略の存在を明らかとした。さらにグリコーゲン代謝酵素の概日UV耐性リズムへの関与を示し、 UV耐性とグリコーゲン代謝がトレードオフの関係にある可能性を示した。 本年度の研究では(1)概日時計の出力ネットワークとUV耐性との関係の調査、(2)CPD-ELISAを用いたDNA損傷修復活性の評価、を行った。 (1)では分子遺伝学的解析によりUV耐性とグリコーゲン代謝と概日時計とを結びつける具体的な経路を絞り込んでいった。これらの解析を通じて既知の時計出力因子SasAとCikAがUV耐性に対して互いに逆の作用を示すことが分かった。次年度以降さらにこれら出力ネットワークからUV耐性とエネルギー獲得の間のバランスが、どのように制御され生理学的意義を持つのか明らかとする。 (2)ではDNA修復活性について検討するために、生体内の主要なDNA損傷の一つであるCPDに着目して実験を進めた。CPD特異的な抗体を使用したELISA法を用いて時刻依存的なDNA損傷修復活性を検出するための系を立ち上げた。DNA損傷修復の活性を見積もったところ、当初の想定のようにはDNA損傷修復活性の概日リズムを観察することはできなかった。しかし、いくつかの損傷修復経路に関する変異体で概日UV耐性リズムが消失する様子が観察され、これらの変異体の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は私たちが新たに見出したシアノバクテリアにおける概日UV耐性リズムの性質が観察される条件など、基盤的なデータを多数取得することができた。その成果について生物リズムに関する国際学会であるSociety for Research on Biological Rhythmsにて研究発表を行った。また論文における主張を補強するための予備データの収集のために十分に時間を割くことができた。早急にこれまでの研究内容をまとめ、査読付き英文誌へと投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に実施することかできなかった代謝メタボローム解析から概日UV耐性リズムと関連している代謝経路を具体的に探索する。これにより広範なターゲットからUV耐性に関与し得る代謝経路を絞り込む。UV耐性の低い時刻や条件に特徴的な代謝産物動態をメタボローム解析より抽出する。前年度までに行った遺伝学的解析と合わせてメタボローム解析を用いてシアノバクテリアの昼夜における適応戦略に関する議論を補強することを目指す。
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Research Products
(4 results)