2018 Fiscal Year Annual Research Report
環境要因が及ぼす脳内ポリシアル酸変動の発見とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
18J15020
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Research Institution | Nagoya University |
Research Fellow |
阿部 智佳羅 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ポリシアル酸 / ストレス / 統合失調症 / シアリダーゼ / ミクログリア / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
今までマウスに対して尾懸垂(TS)により急性ストレスを与えると、領域特異的にポリシアル酸(polySia)が変動することが明らかとなっていたが、なぜpolySiaが変動するのかそのメカニズムに関しては未解明のままであった。そこで、TSによってpolySiaが減少した嗅球(OB)及び前頭前野(PFC)に着目し、どのようなメカニズムでpolySiaが減少するのか解明することを目的として実験を行った。 まずリアルタイムPCRによってpolySia関連遺伝子の変動を調べたところ、OB, PFCいずれも遺伝的変動は認められなかった。続いて、polySiaを含むシアル酸鎖を切断する酵素シアリダーゼが関与しているのではないかと考え、シアリダーゼ阻害剤DANAをマウスに投与した所、OB, PFCともにDANAによってシアリダーゼ活性が抑制され、それにより急性ストレスによるpolySia減少が抑制された。 当研究室の住田の研究により、ミクログリア細胞に対しLPS刺激を与えるとシアリダーゼが分泌し、それに伴い細胞表面のpolySiaが消失することが明らかとなっていることから、ミクログリアがシアリダーゼの分泌細胞と考え、ミクログリア阻害剤であるミノサイクリンを投与した所、OBではpolySiaの減少が抑制されたがPFCでは抑制されなかった。そこで、同じグリア細胞であるアストロサイトがPFCでは関与していると考えアストロサイト阻害剤であるガバペンチンを投与した所、PFCでのpolySia減少が抑制された。 以上の結果より、OB, PFCにおける急性ストレスによるpolySiaの減少は遺伝的変動によるものではないこと、シアリダーゼが関与していることは共通しているものの、その分泌メカニズムは異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前頭前野ではミクログリアがpolySiaの減少に関与しておらず、代わりにアストロサイトが関与しているという想定外の結果が明らかとなり、その解明に時間がかかってしまったが、急性ストレスによる嗅球及び前頭前野におけるpolySiaの減少メカニズムが概ね明らかになったため、研究は概ね順調に進んだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はグリシンやDHA等の食品成分やブロモクリプチン等の精神疾患の治療薬などの投与により、急性ストレス以外の環境要因が脳内のpolySiaにどのような影響をもたらすかどうか、またそれらの成分がストレスへの影響にどのような効果をもたらすか調べる予定である。また、遺伝的要因×環境要因の複合的な影響を見るべく、統合失調症モデルマウスに対し急性ストレスを与えることで、野生型と比べてpolySiaの発現変動にどのような差が生じるかどうか調べる予定である。
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Research Products
(3 results)