2018 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースのその場自己組織化を利用したナノコンポジット材料の創製
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18J15025
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秦 裕樹 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2) (30872981)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | セルロース / その場自己組織化 / 多孔体 / ナノ材料 / 分散固定 / ナノコンポジット材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、ナノ材料のコロイド分散液中では酵素合成されたセルロースがその場でナノリボンネットワーク状の多孔体へと自己組織化することを利用して、セルロースナノ結晶(CNC)や酸化グラフェン(GO)といったナノ材料をその多孔体内部に分散固定できることを見出している。本年度は、GOを担持したナノリボン多孔体を機能性材料へと展開すること、ならびに分散固定に適用できるナノ材料種の多様化を目指した。 まず、機能性材料への展開を検討した。GO担持ナノリボン多孔体をヨウ化水素により化学還元した結果、還元されたGOが緻密な多孔構造からなるゲルを形成した。これはGOが還元されて凝集性が高まっても分散固定により凝集抑制され、結果として沈殿せずに多孔構造形成したためと推察される。得られた還元型GOゲルは良好な電気伝導性を示し、さらに電気化学測定から、スーパーキャパシタの電極材料として機能することが明らかとなった。次いで、GO担持ナノリボン多孔体をバイオセンシングのためのプラットフォームとして応用した。すなわち、蛍光標識されたセンサーデオキシリボ核酸(DNA)が相補的なターゲットDNAと二重鎖形成するとナノリボン多孔体中のGO表面への吸着量が減少することを利用し、上清の蛍光測定によりセンシングを達成できた。重要なことに、GOが部分還元されている場合、その表面へのDNAの吸着が強いために、高濃度タンパク質夾雑下でも脱着することなくセンシングできることを見出した。 次いで、分散固定できるナノ材料種の多様化を検討した。まず、従来のセルロース合成条件では、クレイ粒子やポリスチレン粒子が疎水性効果により凝集して沈殿し、分散固定できなかった。合成条件の系統的な探索の結果、合成温度を従来の60 ℃から30 ℃に低下させ、疎水性効果を低減させた場合、それら粒子もナノリボン多孔体中に分散固定できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GOをナノリボン多孔体中に分散固定することで凝集を高度に抑制でき、その機能発現に重要な高い比表面積を維持したまま機能性材料を構築できることを見出した。具体的には、スーパーキャパシタの電極材料として機能する導電性ゲルならびにバイオセンサーのためのプラットフォームを構築した。この結果は、通常は凝集して機能低下しやすいナノ材料をベースとした機能性材料の創製にナノリボン多孔体中での分散固定が有用であることを示している。さらに、ナノリボン多孔体の形成条件の系統的な探索により、分散固定に適用できるナノ材料の種類を拡張できる条件を見出した。これは今後、ナノリボン多孔体中での分散固定を利用した材料創製を、多様なナノ材料に展開していく上で重要な知見となると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
スーパーキャパシタについて、GO担持ナノリボン多孔体の化学還元条件ならびに電気化学測定条件を系統的に探索することで、比静電容量の向上を図る。さらに、タンパク質夾雑下でのバイオセンシングについて、これまでモデル夾雑タンパク質としてウシ血清アルブミンを用いてきたが、今後は血清等を用いることで、実際の生体試料により近い系でのセンシングが可能か検討する。加えて、これまではセンシングのターゲットをDNAとしてきたが、センサーDNAにアプタマーを用いることで、タンパク質をはじめとする多様な生体分子のセンシングを検討する。
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