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2018 Fiscal Year Annual Research Report

哺乳類冬眠動物が有する低体温耐性のメカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 18J15084
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

姉川 大輔  東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywords冬眠 / 温度生物学 / 低体温 / 細胞死
Outline of Annual Research Achievements

ヒトを含む多くの哺乳類にとって、体温を約37℃に維持することは非常に重要である。実際ヒトの場合、体温が18℃を下回ると心停止することが報告されている。一方で、冬眠する哺乳類の中には、冬眠中体温が10℃以下になるにも関わらず、生命を維持できるものが存在する。しかし、冬眠動物が、なぜ低体温状態でも生存可能なのかは未だ不明である。本研究は、冬眠動物の低温耐性の機構の解明を目指している。
これまでに本研究により、冬眠動物シリアンハムスターは、冬眠中に顕著な腎・肝機能障害を示さないことが明らかになった。さらに、冬眠しない哺乳類であるマウスと、冬眠動物ハムスター、それぞれの肝細胞を低温で培養することで、ハムスターは細胞自律的な低温耐性をもつことが明らかとなった。この細胞自律的な低温耐性が、冬眠中の臓器機能の維持、ひいては生命維持に寄与していると考えられる。さらに、この低温耐性は、冬眠していない時と比べ、冬眠中のハムスターでより増強されることも判明した。この結果は、冬眠していない時期から、冬眠までの間で、細胞レベルで性質変化が起きることを示唆している。
医療現場では、移植用臓器の低温保存や低体温療法が行われる例があるが、長期間の低温処理は患者の予後に悪影響を及ぼすことが知られている。冬眠動物の低温耐性の分子機構が明らかになれば、これら治療法の改善に応用できる可能性があり、医学的な意義も大きい。現在、低温耐性の分子機構解明を目指し、低温時に発現変動する遺伝子や、低温時に誘導される代謝変化に着目し、解析を進めている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

前年度から引き続き、哺乳類冬眠動物が有する低体温耐性機構の解明を目指した。前年度に構築した、初代培養肝細胞の系を用いて、冬眠動物シリアンハムスター(以下、ハムスター)が細胞自律的な低温耐性を持つか否かを直接検証した。その結果、冬眠しない哺乳類であるマウスの肝細胞は、2日間の低温培養で9割以上が死滅した一方で、ハムスター肝細胞は1割以下の細胞死しか示さなかった。この実験には、常温・長日条件で飼育した個体を用いた。ハムスターの冬眠は、個体を2-3ヶ月程度寒冷・短日環境で飼育することで誘導されるが、常温・長日条件では誘導されない。したがって、ハムスター肝細胞は、個体が冬眠を行う前から、生得的に細胞自律的な低温耐性を有していると考えられる。次に私は、冬眠していないハムスターと冬眠中のハムスターの低体温耐性を比較した。ハムスター肝細胞を5日以上の長期にわたって低温培養したところ、冬眠していないハムスターの肝細胞でも、5日間低温培養してもほとんど細胞死を示さないことが明らかになった。しかし、16日間低温培養を続けると、一部の冬眠していないハムスターでは大多数の細胞が死滅した一方、冬眠中のハムスターでは、細胞死の量が少なかった。さらに、ハムスターが冬眠期間中に、低体温状態とそこからの復温を何度も経験することをふまえ、肝細胞に低温培養・復温ストレスを与えた。その結果、やはり冬眠していない個体よりも、冬眠中の個体の方が細胞死の量が少なかった。これらの結果は、低温ストレス耐性が、冬眠していない時と比べ、冬眠中に増強されることを示している。ここまでの結果を、国内の学会で発表し、現在論文投稿の準備中である。

Strategy for Future Research Activity

冬眠動物の低温耐性の分子機構解明を目指す。これまでに、RNAseq解析により、肝臓を含む複数の臓器で、冬眠中の低体温状態において、通常体温時と比べ発現が変動する遺伝子を同定している。これら遺伝子の発現変動が、低温耐性に寄与しているという仮説のもと、これら遺伝子の機能解析を行う。冬眠しない哺乳類への応用も視野に入れ、ヒト・マウス由来の培養細胞の系を用いて、低温誘導性の細胞死数を主な指標にして行う。
また、これまでに、マウス・ハムスター肝細胞を用いたメタボローム解析を実施し、通常温度および低温培養時の代謝物プロファイルを記述した。この解析から、ハムスターの肝細胞に特徴的な代謝変化を見出している。冬眠動物の低温耐性に関与する代謝状態変化を明らかにするために、この変化に関連する代謝経路を薬理学的もしくは遺伝学的に操作し、低温応答が変わるか否かを解析する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)

  • [Journal Article] 冬眠する哺乳類が示す虚血再灌流傷害耐性2019

    • Author(s)
      姉川大輔、三浦正幸、山口良文
    • Journal Title

      臨床免疫・アレルギー科

      Volume: 第71巻第2号 Pages: 170-176

  • [Presentation] 冬眠する哺乳類シリアンハムスターの細胞自律的な低温耐性2019

    • Author(s)
      姉川大輔、茶山由一、安藤理沙、泰井宙輝、重信秀治、佐藤佑哉、三浦正幸、山口良文
    • Organizer
      第4回北大部局横断シンポジウム
  • [Presentation] Cell autonomous cold resistance of a mammalian hibernator, Syrian hamster2019

    • Author(s)
      Daisueke Anegawa, Yuichi Chayama, Lisa Ando, Hiroki Taii, Shuji Shigenobu, Masayuki Miura, Yoshifumi Yamaguchi
    • Organizer
      9th FAOPS congress
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Cell autonomous resistance to cold-induced cell death in a mammalian hibernator2018

    • Author(s)
      Daisueke Anegawa, Yuichi Chayama, Lisa Ando, Hiroki Taii, Shuji Shigenobu, Masayuki Miura, Yoshifumi Yamaguchi
    • Organizer
      Australia-Japan Meeting on Cell Death
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 冬眠する哺乳類シリアンハムスターの細胞自律的な低温耐性2018

    • Author(s)
      姉川大輔、茶山由一、安藤理沙、泰井宙輝、重信秀治、佐藤佑哉、三浦正幸、山口良文
    • Organizer
      第41回日本分子生物学会年会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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