2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J15176
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Research Institution | Saitama University |
Research Fellow |
陶 尚寧 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 斜面表層崩壊 / 早期警報 / 弾性波速度 / 減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、斜面表層の降雨による崩壊の予兆を、表層地盤内の弾性波の伝播特性の変化から捉える方法を検討する。 室内実験について、表層のせん断変位と崩壊を再現する多層せん断模型を用いて、表層地盤内の弾性波の伝播の様子を精密に測定した。水分量やせん断力の変化に応じて、弾性波速度が明確に変化することを確かめた。 体積含水率の影響:せん断応力をかけないかつ変位発生しない状態で、60mm/hの降雨を与えた後に排水した。体積含水率の変化(0.15~0.27)に対して、弾性波速度は10%~20%低下した。せん断応力の影響:降水を与える各層の体積含水率を一定に保った状態で、せん断応力を徐々に大きくする実験を行った。せん断応力が大きいほど弾性波速度が小さいことが分かった、せん断応力の変化(0~8kN/m2)に対して、弾性波速度は10%~50%低下した。崩壊直前のせん断変位の影響:傾斜角33°に対応したせん断応力をかけたところ、約1時間かけてせん断破壊した。せん断変位(0.7~1cm)に対して、弾性波速度はさらに20%低下した。
実斜面での弾性波伝播モニタリングについて、熊本県阿蘇市的石の斜面に全自動式の弾性波の加振・測定装置を設置した。発信機は、電磁石でハンマーをケースにぶつける機構を持ち、10 分間隔で動作して短いインパルス的な振動を地中に発生させる。受信機は高感度の加速度センサー(Analog Devices 社ADXL354)である。データ収録装置は発信機の発信タイミングを制御し、受信機で受信したデータを処理し,SD カードに保存する。また、METER 社のEC-5 を埋めて土中の体積含水率を測定した。装置の電源は自動車用のバッテリーを、ソーラーパネルで充電しながら供給した。結果は、弾性波の最大振幅と減衰が体積含水率とともに変化していることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室内実験について、多層せん断模型を用いて、表層地盤内の弾性波の伝播の様子を精密に測定し、水分量やせん断力の変化に応じて、弾性波速度が明確に変化することを確かめた。そこで、降雨前期に水分量増えると共に、弾性波速度は上昇する現象があった、これは水分量増加で上載圧が大きくなる原因か或いは土のサクション変化の原因かを解明する為に、下記実験が必要:土のサクションの測定が必要である。三軸圧縮試験装置で上載圧と弾性波速度の関係を調べる。 実斜面での弾性波伝播モニタリングについて、弾性波測定装置(発信機,受信機とデータ収録装置など)を作成し,阿蘇市的石の斜面を対象にして2018年5月から2018年12月の間に弾性波モニタリングを実施し、以下の結果を得た。弾性波の自動的な発信、受信とデータ収録ができた。弾性波の最大振幅と減衰が体積含水率とともに変化していることを確認できた。2019 年度は、以下の課題について改善した測定を行う。弾性波速度の変化が明確に測れなかった。原因として、サンプリングレートが低い(7kHz)ことが考えられるので、100kHz でサンプリングできるデータ収録装置を作る。受信機設置の深さは最大0.4mである。しかし、これは一般的な表層崩壊の深さより浅く、当該斜面に見られる亀裂の深さからえても、これより深い位置で滑る可能性が高い。発信器、受信機を1m程度の深さに設置する。体積含水率計の設置深さも最大0.2mである。これも1m程度までの複数の深さに設置。
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Strategy for Future Research Activity |
室内実験について、引き続いて表層のせん断変位と崩壊を再現する多層せん断模型を用いて、表層地盤内の弾性波の伝播の様子を精密に測定する。降雨前期に水分量増えると共に、弾性波速度は上昇する現象があった、これは水分量増加で上載圧が大きくなる原因か或いは土のサクションの変化かを解明する為に、気圧センサーを追加して、表層地盤内の水圧と土のサクションを測定し、弾性波速度と減衰を確かめる。 三軸圧縮試験装置で上載圧と弾性波速度の関係を調べる、供試体には熊本県南阿蘇村の被災斜面で取った試料もを実施する。 実斜面での弾性波伝播モニタリングについて、弾性波測定装置(発信機,受信機とデータ収録装置など)を改良し,阿蘇市的石の斜面を対象にして2019年5月から2020年3月弾性波モニタリングを実施する。弾性波速度の変化が明確に測れる為に、100kHz でサンプリングできるデータ収録装置を作る。一般的な表層崩壊は1mくらいなので、発信器、受信機を1m程度の深さに設置する。体積含水率計の設置深さを1m程度までの複数の深さに追加設置。
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