2018 Fiscal Year Annual Research Report
高効率人工光合成実現のための超広帯域光電変換マルチバンドギャップ物質の創成
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18J15214
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
立溝 信之 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 窒化アルミニウム / 深紫外LED / 無極性 / 量子シュタルク閉じ込め効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高効率な人工合成デバイス実現に向け、3d遷移金属添加AlN薄膜の合成、分析、更に理論予測も行った。また、私がごく最近合成に成功した無極性成長膜の成長メカニズムの解明と、結晶高品質化研究にも取り組んだ。 c軸配向型ウルツ鉱型AlN薄膜には、AlとNが面直方向につながった構造に由来する電気的極性がある。結果として薄膜表面、界面で大きな分極が発生し、種々のデバイスで問題となっている。例えば、トランジスタではノーマリーオンになってしまう、深紫外LEDなどの発光デバイスでは発光効率が低い、などである。申請者が実現を目指す人工光合成デバイスでも同様に、光で形成された電荷を分離し取り出す効率が低くなる問題がある。成長方向に極性を持たない無極性膜を作製することが、これらの問題の解決策とされる。本研究により無極性膜の新たな作製法が確立されれば、人工光合成デバイスだけでなく、窒化物半導体で構成される種々のデバイスの抱える問題も解決できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、超高効率光電変換と人工光合成デバイス応用にむけた高濃度3d遷移金属添加によるAlNのバンド構造エンジニアリング研究を推進している。このテーマについては、2018年度に論文を1報出版した。また、国際会議での口頭発表(招待講演)も行った。 さらに2018年始めに発見した、高濃度Fe添加によるウルツ鉱型AlN系薄膜の配向性転移(無極性化)現象についても、その再現性を確認し、大学の支援を得て特許申請(特願2019-072442)を行った。この成果については、論文を1報出版し、国際会議での口頭発表も行った。 その後、この高濃度Fe添加AlN薄膜のアニール処理による結晶性の向上研究を開始している。この研究テーマについて、研究代表者として研究助成を申請し、採択されている。さらにSPring-8の大学院生提案型課題も採択され、Fe添加による配向性転移およびアニール処理に付随する局所的結晶状態・電子状態の変化研究を強力に推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
a軸配向型Fe添加AlN薄膜をデバイスへ応用可能にするために、結晶高品質化の研究に取り組む。具体的には、研究I、II、IIIを推進し、「実験→評価→条件の見直し」を繰り返すことで、結晶品質向上を実現する。これにより、全く新しい無極性基板の作成方法として提案する。 Ⅰ 成膜条件の最適化 これまではFe濃度依存性を調べることにより、Feが約20%でa軸配向することがわかった。本研究では更に、基板温度、ガス圧力、ガス混合比(Ar/N2)などの、結晶品質を左右する重要な成膜条件を調べ、最適化する。また、これまではAlN焼結ターゲット上にFe金属チップを置いて成膜していたが、成膜ごとのFeチップ配置位置のズレによる組成のばらつきが問題になってた。Al・Fe混合ターゲットを用いた反応性スパッタも検討することで、組成の再現性の高い成膜を目指す。 Ⅱ アニール条件の最適化 研究Ⅰで得られた薄膜を窒素雰囲気でアニールし、単結晶化をねらう。これにより、LED用基板として利用可能なレベルまで結晶品質を向上させる。近年、三重大学の三宅らは、スパッタで成膜した多結晶型AlN薄膜を高温(1500~1800℃)でアニールすることでデバイスクオリティまで結晶品質が向上すると報告しており、私はこの高温アニールがa軸配向Fe添加AlNでも有効であると考えている。 III 薄膜特性の評価 研究I、IIで得られた薄膜の結晶学的特性などの基本的な特性評価を行う。また、Fe添加による配向性変化のメカニズムも調査する。これにより、最適な成膜・アニール条件設定の指針とし、I、IIにフィードバックする。 以上の実験結果を解析、考察し論文、国際会議等で発表を行う。
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Research Products
(5 results)