2018 Fiscal Year Annual Research Report
LHC-ATLAS実験におけるヒッグス粒子対生成事象を用いた新物理探索
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18J15246
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐野 祐太 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ヒッグス対生成事象 / 素粒子実験 / VBF過程 / LHC-ATLAS実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
重心系エネルギー13 TeVの陽子陽子衝突実験であるLHC-ATLAS実験で、ベクトルボソン(V)同士が融合するVBF過程でヒッグス粒子(h)が対生成される事象にLHC で初めて着目した。2HDMにおいて、VBF過程は今まで探索されてきたggF過程とは異なるパラメータ空間に高い感度を持つ。さらに、今まで全くアクセスできなかったVVhhの4点結合C2vの測定によって新物理の有無も検証できる。本研究は、127 fb-1の全衝突データを用いた解析を進めている。 本研究は、2つのヒッグス粒子hが生成され、どちらも分岐比が最大のbクォーク対に崩壊する過程を用いる。終状態が全てハドロンジェットであり、支配的なQCDマルチジェット事象由来の背景事象の見積もりが本解析の肝となる。そのため、QCDマルチジェット事象が豊富な2 bクォーク候補のみを要求したサンプルを用いた独自の見積もり手法を開発・検証した。また、bクォーク候補がセミレプトニック崩壊した場合ニュートリノが放出される。ニュートリノは検出できないため、bジェットのエネルギーが低く見積もられてしまう場合があり、ヒッグス候補の質量測定分解能が悪化する。そこで、トップクォーク対生成事象を用いてbジェットのエネルギーをシミュレーションの真の粒子情報と比較して、BDTを用いて導出された横運動量への補正項を本解析で導入した。 本研究によって、127 fb-1の全衝突データを用いれば、2HDMにおいて、ggF 過程と比べて比較的大きな信号数が期待されるパラメータtanβ=2、sin(β-α)=0.6で460 GeVから約1000 GeVまでの質量領域を棄却すると期待される結果を得た。また、VVhh結合定数C2vは、標準模型での値を1とするとC2v < -1.03, 2.62 < C2vを棄却すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VBF過程特有の終状態に特化した信号領域に対して独自に開発した解析手法を、2018年までに取得された全データ127 /fbを用いて検証できた。さらに、当初計画していた2HDMに対する信号解釈のみならず、本解析がベクトルボソンとヒッグス粒子の4点結合に対しても有意に感度を持つことも示せた。本研究は計画通り順調に進んでおり、現在はいよいよ大詰めの段階となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本解析手法由来の系統誤差および検出器自体のbジェットエネルギー測定等の全系統誤差を見積もり、本研究で新たに導入した信号領域で127 /fbの実データと背景事象見積もり結果の比較を行い、2HDMで予言される重い中性ヒッグス粒子やベクトルボソンと標準模型ヒッグス粒子の4点結合の標準模型からのズレ等の新物理事象による背景事象からの超過を統計処理により求める。その結果に応じて物理の議論も進める。本研究による成果は学術論文としてまとめ、国際会議や日本物理学会等で報告する。
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