2018 Fiscal Year Annual Research Report
負極集電体の結晶方位に着目した金属リチウム負極のデンドライト抑制
Project/Area Number |
18J15378
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石川 晃平 名古屋大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 金属リチウム負極 / 二次電池 / デンドライト成長 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属リチウム負極は高いエネルギー密度を有する二次電池の負極材料として期待されている。しかしながら、充放電を通じて負極上に生じる不均一な析出物(デンドライト)による低いサイクル特性が課題となっている。この問題に関してはこれまでに様々な対策が考案されてきたが、これまでに、結晶成長の観点から負極集電体の結晶方位に着目した研究はなされてこなかった。そこで、本研究では、金属リチウム負極の析出過程と負極集電体の結晶方位の関係に着目し、金属リチウム負極二次電池のサイクル特性向上を目的としている。具体的には、単結晶および方位配向を有する銅負極集電体を用い、その上に析出する金属リチウムの形状と負極集電体の結晶方位の影響を調査することにより、デンドライト抑制に効果的な集電体の方位を明らかにすることが目的である。 本年度では、単結晶Cu集電体を用いた場合の析出リチウムの析出形状、および、充放電によるサイクル特性の結晶方位依存性を調査した。その結果、単結晶Cu集電体では結晶粒が存在しないため均一な析出形状が得られること、Cu(111)面上で最も均一な析出形状が得られることが明らかとなった。以上より、Cu(111)単結晶を用いた場合に最も良好なサイクル特性が得られることが予測されるため、同様の集電体を用い、短時間の充放電試験を行った。この実験により、単結晶Cu(111)およびCu(101)面上でLiの析出過電圧が小さく、良好なサイクル特性が得られることが示された。また、実験後の単結晶Cu集電体に対して、析出Liと電解液間に存在する反応被膜(SEI)の解析をXPSにより行った結果、SEIの厚みに方位依存性が存在することが明らかとなった。また、良好なサイクル特性が得られたCu(111)面ではSEI被膜が最も薄くなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶Cu集電体上における析出リチウムの析出形状、および、サイクリックボルタンメトリーによるサイクル特性の結晶方位依存性を調査した。その結果、結晶粒が存在しないため、単結晶Cu上では均一な析出Liが得られること、Cu(111)面上で最も均一な析出形状が観察されることが明らかとなった。以上より、Cu(111)単結晶を用いた場合に最も良好なサイクル特性が得られることが予測されるため、サイクリックボルタンメトリーによる短時間の充放電試験を行った。この実験により、単結晶Cu(111)およびCu(101)面上でLiの析出過電圧が小さく、良好なサイクル特性が得られることが示された。さらに、実験後の単結晶Cu集電体に対して、析出Liと電解液間に存在する反応被膜(SEI)の解析をXPSにより行った結果、SEIの厚みに方位依存性が存在することが明らかとなった。また、良好なサイクル特性が得られたCu(111)面でSEI被膜が最も薄くなることが示された。また、多結晶Cu上のSEIに対して、AESを用いてSEIの膜厚変化を測定した結果、SEI膜厚の方位依存性は単結晶Cu上の場合と同様の傾向を示すことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(001), (101), (111)方位配向を有する単結晶銅集電体を用い、対極を金属リチウムとして長時間のサイクル充放電を行い、集電体の方位がサイクル特性に及ぼす影響を調査し、金属リチウム負極のデンドライト抑制に最も効果的な集電体の結晶方位を明らかにする。また、サイクル充放電後の析出リチウム形状の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察、X線光電子分光(XPS)、およびオージェ電子分光(AES)を用いた表面被膜の組成分析を通じて、銅集電体の結晶方位がサイクル特性に影響を及ぼすメカニズムを、金属リチウムの析出過程から明らかにすることを試みる。 また、XPSを用いたこれまでの調査により、析出リチウムの形状だけでなく、その表面被膜(SEI)の組成も結晶方位によって大きく異なることが示されている。Li電池に関する先行研究では、電解液の組成や添加物はSEIの組成に大きな影響を及ぼし、金属リチウム負極のサイクル特性を向上させることがこれまでに報告されている。以上の結果から考察すると、電解液の種類や添加物が金属リチウム負極のサイクル特性、および析出形状に及ぼす影響は、負極集電体の方位によっても大きく変化することが予想される。そこで、これまでに用いてきたLiPF6系電解液と比較してサイクル特性向上が見込まれるLi-TFSI系電解液を用いて上記と同様の実験、解析を行うことにより、サイクル特性に及ぼす効果と負極集電体の結晶方位の関係解明を試みる。
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Research Products
(5 results)